- 6月 14, 2025
帯状疱疹の生ワクチンVS不活化ワクチン(シングリックス)あなたならどちらを接種しますか?
今年度より65歳から5歳刻みで誕生日を迎える患者さんが帯状疱疹ワクチンの公費補助が始まりました。患者さんからのよくいただく質問をまとめましたので参考にしてください。
Q1:帯状疱疹は誰でも発症する可能性があるの?
日本人の帯状疱疹ウィルスの保有率は50歳以上で100%と言われています。すなわち、50歳以上の人全員に発症リスクがあるということになります。
Q2:帯状疱疹の好発年齢は?
帯状疱疹の全患者のうち約65%が50歳以上に集中しています。80歳以上では3人に1人が発症しています。
Q3:帯状疱疹は再発するの?
帯状疱疹に対する終生免疫を獲得することはありません。約10%の人が再発すると報告されています。一度かかったからもう安心とはなりません。
Q4:なぜ、帯状疱疹ワクチンが重要なの?
帯状疱疹は発症後に帯状疱疹後神経障害性疼痛という、言葉にならないレベルの痛みを伴うからです。かつ、その痛みは長い人は6ヶ月から1年以上続いてしまい、日常生活がまともに送れなくなってしまうからです。患部がシャツで擦れただけで激痛が走ると訴える方もいます。痛みが強すぎて普段通りの生活が送れなくなった方が約66%、抑うつ傾向になる方が約46%、身の回りの事すらできなくなる方が約20%と報告されています。
Q5:生ワクチンの予防効果はどれくらいですか?
生ワクチンは3年間で全世代合算で予防効果は51%でした。しかし年代別に見ると60歳から69歳は64%、70歳から79歳は41%、80歳以上に至ってはたったの18%しかありませんでした。また、長期的な有効性は確認されておらず、3から5年で発症予防効果が半減するという報告があります。米国では2020年に予防効果が不活化ワクチン(シングリックス)と比べて明らかに低いことが理由で販売が中止になっています。
Q6:不活化ワクチン(シングリックス)の予防効果はどれくらいですか?
シングリックスは追跡3年のデータで全世代の発症予防効果が97.2%でした。60-69歳以上97.4%、70歳以上で97.9%という驚異的な結果が報告されています。また別の試験の年齢別解析では80歳以上であっても発症予防効果は91.4%という結果でした。そして、長期的な有効性も確認されており接種10年後も73.2%の発症予防効果が確認されました。また、50歳以上の試験において、帯状疱疹後神経障害性疼痛の発症予防は100%、70歳以上に絞った試験においては85.5%の発症予防効果が確認されています。
Q7:副作用は?
生ワクチンの方が接種部位疼痛や接種後の発熱などが少ないです。個人差はあるものの、不活化ワクチンであっても1日程度で症状が改善に向かうことがわかっています。
Q8:結局どちらがいいの?
双方のメリット・デメリットを考慮して患者さん自身で決定していただくのがいいかと思いますが、当院ではより有効性が高いシングリックスをお薦めしています。特に年齢が高い方は、生ワクチンは接種するだけ正直無駄と言ってもいいくらい有効性が低いのです。不活化ワクチンの方が確かに副反応は多少強いものの、あくまでこの生ワクチンと比較したらという話であって、肺炎球菌ワクチンなどと大差はないわけです。目先の副作用を気にしすぎて、長期的かつ比較にならないレベルの高いメリットを放棄するのはあまりにも本末転倒と言わざるをえません。
Q9:なぜ海外では有効性が低いとのことで販売中止になったワクチンが日本では公費対象になっているのでしょうか?
断定的なことは言えませんが、帯状疱疹生ワクチンは日本人が開発した事が大きな理由ではないかと言われています。