• 6月 1, 2025

喘息の管理目標とは?

日本アレルギー学会が提唱する喘息の長期管理目標はご存じでしょうか?

風邪や肺炎に長期管理目標はありますか?無いですよね。たとえば肺炎ガイドラインを見ても、重症肺炎の短期的な治療管理の指標はあっても10年、20年の長期管理の指標や目標はないのです。

それは、喘息は治す病気ではなく、付き合っていく病気だからです。だからこそしっかりとした長期管理目標が必要であり、それを満たすように治療を行っていく必要があるのです。ただ単に寿命を伸ばすための医療ではなく、健康寿命を伸ばすために必要な事なのです。

症状のコントロールは日々の吸入ステロイドで行うことになります。吸入を続けることで発作が予防できる可能性が高まり、発作を起こすたびに呼吸機能が低下することの予防につながるのです(下記の表の2の3。)。1年に1回の発作で約40ml、2回の発作で60ml程度の呼吸機能が失われます。1年に1回程度しか発作を起こさないからその時だけ薬を使えばいいやと思っている人は本当に思い直して頂きたいです。仮に毎年1回から2回の発作を起こした場合、失われる呼吸機能は20年で800ml−1200ml、30年で1200ml-1800mlとなります。平均的な体格で成人男性で3000ml前後、成人女性で2500ml前後です。1500mlを切ると肺関連の病気で手術が必要になった時に全身麻酔の合併症リスクが高まると言われています。また、薬を使っても取れない軽労作(自宅の階段やゆるい坂道)での息切れなどにも悩まされる事になります。大病がなければ必ず将来が来ます。今の生活状況、治療状況によって将来の生活が決まってしまうのです。将来も健康で生き続けたいのであれば、やるべき事を必ず行う。これが大事です。私の中学時代にお世話になった校長先生の口癖が、『当たり前の事を当たり前にやろうよ』でした、、、。この文章を書いていて当時の記憶がフワッと蘇ってきました。笑。

Ⅰ. 症状のコントロール (増悪や喘息症状がない状態を保つ)
①気道炎症を制御する
②呼吸機能を良好に保つ
Ⅱ. 将来のリスク回避
①喘息死を回避する
②急性増悪を予防する
③呼吸機能の経年低下を抑制する
④治療薬の副作用発現を回避する
⑤健康寿命を良好に保つ

文責:医療法人社団南州会 理事長 井上哲兵
経歴
2009年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学研修医、同大学呼吸器内科、国立病院機構静岡医療センターにて研鑽を積み、2019年4月医療法人社団南州会理事長就任。同年8月三浦メディカルクリニック開院。2024年5月横浜フロントクリニック開院。
資格・役職
医学博士・日本内科学会認定内科医・日本呼吸器学会呼吸器専門医・日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医・厚生労働省認定臨床研修指導医・身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
難病法における難病指定医(呼吸器)・緩和ケア研修会修了医

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