• 4月 17, 2026

「春は眠い」を放置しないで|その眠気の原因、3つの視点で内科医が整理します

「春眠暁を覚えず」という言葉があります。春の夜の眠りは心地よく、夜が明けたことにも気づかないほど眠い、という意味です。春が眠い季節であることは昔から知られていましたが、現代の外来では「春は眠いよね」では済まないケースが増えています。

「寝ても寝ても眠気が取れない」「昼間に突然眠くなって仕事に支障が出る」「朝起きても疲れが取れない」──こういった状態が続いている方は、季節のせいだと片付ける前に、眠気の原因を一度きちんと整理してみる必要があります。

春の眠気には複数の原因が絡み合っています。今日は呼吸器専門医の立場から、代表的な3つの原因と、それぞれの対策を解説します。

春に眠くなりやすいことには、いくつかの生理的な理由があります。

寒暖差と自律神経の消耗 春は日較差が大きく、体温を一定に保つために自律神経がフル回転します。自律神経は昼間の活動モード(交感神経)と夜間の休息モード(副交感神経)を切り替える役割も担っているため、寒暖差への対応でこの切り替えリズムが乱れると、昼間に眠気が出やすくなります。横浜のような海沿いの都市は海風と内陸の気温差が大きく、この影響を受けやすい環境でもあります。

日照時間の変化とメラトニンのズレ 春になると日照時間が急に長くなります。睡眠ホルモンであるメラトニンは光刺激によって調整されているため、日照時間の急激な変化に体内時計の調整が追いつかず、「朝スッキリ起きられない」「昼間に眠くなる」という状態が生じやすくなります。

これらは春特有の生理的な変化ですが、以下で述べる原因が重なると眠気は一層強くなります。

花粉症の治療に使われる抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンという物質の働きを抑えることでくしゃみ・鼻水・目のかゆみを和らげます。ただ、ヒスタミンは脳内では「覚醒を維持する」役割も担っているため、その働きを抑えると眠気が出やすくなります。

抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代に分類され、現在の花粉症治療では眠気の副作用が少ない第二世代が主流です。当院でも処方機会が多いビラノア(一般名:ビラスチン)は、脳への移行率が2%未満と低く設計されており、運転能力への影響も臨床試験でプラセボと差がないとされています。第二世代の中でも特に眠気が出にくい薬として位置づけられています。

ただし第二世代であっても「出にくい」であって「絶対に出ない」ではありません。個人差があり、ビラノアですらも眠気を感じる方はごく稀ですが0ではありません。

さらに見落とされがちなのが、花粉症そのものによる睡眠の質の低下です。夜間の鼻づまりで何度も目が覚める、口呼吸になって睡眠が浅くなる──これが翌日の強い眠気につながっているケースも外来では多くあります。薬の眠気よりも、花粉症の症状コントロールが先決なこともあります。

対策: 花粉症の薬を飲んでいて眠気が強い場合は、薬の種類・服用タイミングを見直す余地があります。また鼻づまりがひどい場合は点鼻薬の追加も有効です。かかりつけ医に相談してみてください。

4月は環境が大きく変わる季節です。新しい職場、新しい人間関係、通勤ルートの変化──こうした環境の変化は、自覚のないまま自律神経に負荷をかけます。

自律神経が乱れると夜の睡眠の質が低下します。布団に入っても眠れない、眠れても途中で目が覚める、朝すっきり起きられない──こうした状態が続くと「睡眠負債」が積み重なり、昼間の強い眠気として現れます。

特に新社会人や転職したばかりの方は、緊張や慣れない環境で脳が疲弊しやすく、週末に多く寝ても平日の眠気が解消されないというケースが多くあります。「寝だめ」は体内時計をさらに乱すため、眠気の解消には逆効果になることもあります。

対策: 毎日同じ時間に起床する、朝に日光を浴びる、就寝前のスマートフォン使用を控えるといった基本的な生活習慣の見直しが有効です。15〜20分程度の昼寝も、午後の眠気を和らげる効果があります。2〜3週間経っても改善しない場合は医療機関への相談をお勧めします。

ここが最も見逃されやすいポイントです。

「花粉症の薬のせい」「新生活で疲れているせい」と思っていた眠気が、実は睡眠時無呼吸症候群(SAS)や呼吸器疾患によるものだったというケースが、外来では珍しくありません。

SASは睡眠中に気道が繰り返し塞がり、呼吸が止まる病気です。本人は熟睡しているつもりでも、夜中に何十回も無呼吸が起きているため、脳と体が十分に回復できず、朝起きても疲れが取れない・昼間に強い眠気が出るという状態になります。いびきや朝の頭痛を伴うことが多いですが、自覚症状が乏しいケースもあります。

また、花粉症に喘息が合併しているケースも増えています。「花粉症の時期だけ夜に咳が出て眠れない」という方は、アレルギー性気道炎症や咳喘息が関与している可能性があります。気道の炎症が夜間の睡眠を分断し、日中の眠気につながっているのです。

以下に当てはまる場合は、呼吸器疾患・SASの可能性を考える必要があります。

  • いびきを家族に指摘されている
  • 朝起きても頭が重い・口が渇いている
  • 昼間の眠気が強くて仕事・運転に支障がある
  • 花粉の時期だけ夜に咳が出て眠れない
  • 高血圧や糖尿病の治療中でコントロールが安定しない

対策: SASや呼吸器疾患は自己判断が難しく、検査による評価が必要です。上記に当てはまる項目が複数ある場合は早めに呼吸器内科への受診をお勧めします。

眠気の状況考えられる主な原因
花粉症の薬を飲み始めてから眠くなった抗ヒスタミン薬の副作用
夜中に鼻づまりで目が覚める花粉症による睡眠の質低下
4月から急に眠くなった・夜眠れない新生活のストレス・睡眠負債
いびきがひどい・朝起きても疲れている睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性
花粉の時期に夜の咳で眠れない喘息・アレルギー性気道炎症の可能性
対策しても改善しない眠気が続く呼吸器専門医への受診が必要

春の眠気は「季節のせい」で済む場合もありますが、以下の状態が2週間以上続く場合は受診の目安です。

  • 十分に寝ているはずなのに日中の眠気が取れない
  • 眠気のせいで仕事・運転・日常生活に支障が出ている
  • いびきがひどく、朝の頭痛や口の渇きが続いている
  • 花粉の時期に夜間の咳で睡眠が妨げられている

SASを放置すると、高血圧・不整脈・脳卒中・心筋梗塞などのリスクが高まることがわかっています。喘息や気道炎症も、治療せずにいると気道が徐々にダメージを受け、将来的な呼吸機能の低下につながります。

「なんとなく春になると調子が悪い」という漠然とした不調も、呼吸器の視点から整理できることがあります。

当院では呼吸器内科専門医が、花粉症・アレルギー性気道炎症・咳喘息・SASを同時に評価できます。SASの簡易検査も対応しており、受診当日に検査・評価・治療方針の提示まで行う体制を整えています。

横浜駅西口から直結のため、通勤前後や仕事の合間にご利用いただけます。WEB予約・LINE予約対応です。

参考文献

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
  • 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」南江堂
  • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「アレルギー性鼻炎治療におけるアドヒアランスを考慮した第二世代抗ヒスタミン薬の選択と指導」日本耳鼻咽喉科学会会報 2019

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

  • 緩和ケア研修会修了医
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)
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