• 2月 17, 2026

横浜の寒暖差は全国トップクラス?海風と内陸の温度差が喘息に与える影響


「横浜、朝晩めちゃくちゃ寒くないですか?」

外来で最近よく聞くこの質問。

「日中は暖かいのに、朝の通勤時は凍える」
「横浜駅を出た瞬間、冷たい風で息が苦しくなる」
「海が近いから暖かいと思ってたのに、全然そんなことない」

実は、横浜の2月って1日で10度以上の気温差があることも珍しくないんです。

しかも、海からの冷たい風(浜風)が吹き付けるから、体感温度はさらに低い。喘息をお持ちの方にとって、横浜の気候は実はかなり「厄介」なんですね。

今回は、横浜特有の寒暖差と海風が喘息に与える影響、そして横浜で暮らす・働く方のための対策を、呼吸器専門医の視点から詳しくお伝えします。


横浜の寒暖差、実際どれくらい?

2月の横浜の気温データ

まず、実際のデータを見てみると、横浜地方気象台のデータによれば、例年2月の横浜は

  • 平均気温: 約6〜7度
  • 日中の最高気温: 12〜15度
  • 朝の最低気温: 2〜5度

つまり、1日の気温差が10度前後あるわけです。

しかも、これは「平均」の話。寒波が来た日と暖かい日では、さらに差が大きくなります。

例えば:

  • 前日は最高気温15度だったのに、翌日は8度
  • 朝は2度なのに、昼は16度

こういう日ごとの変動も激しいのが、2月の横浜なんです。

他の都市と比べてどうなのか

「でも、他の都市も同じでしょ?」

そう思いますよね。実際、比較してみましょう。

2月の1日の平均気温差(主要都市比較)

都市1日の気温差特徴
横浜約10〜12度海風の影響で体感温度はさらに低い
東京約9〜11度横浜とほぼ同じだが、海風は弱い
大阪約8〜10度やや温暖
福岡約7〜9度比較的温暖

つまり、横浜の寒暖差は全国の主要都市の中でもトップクラスなんです。

横浜特有の気候要因

では、なぜ横浜はこれほど寒暖差が大きいのでしょうか。
実は、横浜には特有の気候要因があります。

① 海からの冷たい風(浜風)

横浜は東京湾に面しているため、海からの冷たい風が吹き付けます

特に冬の朝晩は、海から冷たい空気が流れ込み、気温以上に寒く感じます。

風速1m増すごとに、体感温度は約1度下がると言われています。したがって、気温が5度でも、風速5mの浜風が吹けば、体感温度は0度になるわけです。

② 内陸部と湾岸エリアの温度差

また、横浜市内でも場所によって気温が大きく違います

  • 湾岸エリア(みなとみらい・関内・山下町など): 海風の影響で冷える
  • 内陸部(青葉区・緑区・都筑区など): 放射冷却で朝の冷え込みが強い
  • 横浜駅周辺: 地下街と地上の気温差が大きい

つまり、「横浜」と一言で言っても、エリアによって気候リスクが異なるんです。

③ 朝晩の放射冷却現象

さらに、晴れた日の朝は放射冷却で冷え込みます。

これは、地表の熱が夜間に宇宙空間に逃げることで起こる現象です。特に内陸部では、この影響が強く出ます。

結果として、「昨日の昼は暖かかったのに、今朝は氷点下近く」ということが起こるわけです。


なぜ寒暖差が喘息を悪化させるのか

気温差と気道の関係

それでは、なぜこの寒暖差が喘息を悪化させるのでしょうか。

冷たい空気が気道を直接刺激する

まず、冷たい空気を吸い込むと、気道が刺激されます

気道は本来、吸い込んだ空気を温めて加湿する機能を持っています。しかし、急に冷たい空気が入ってくると、この機能が追いつかず、気道が直接冷やされてしまいます。

その結果:

  • 気道がキュッと収縮する
  • 気道の粘膜が刺激される
  • 咳や息苦しさが出る

このような反応が起こるわけです。

気道過敏性の亢進

さらに、気温の急激な変化は、気道を過敏にします

日本呼吸器学会の研究でも、気温差が大きい日は喘息の症状が悪化しやすいことが報告されています。

つまり、「昨日は暖かかったのに、今日は寒い」という変化自体が、気道にとってはストレスなんです。

「気温差喘息」とは

最近では、この現象を「気温差喘息」と呼ぶこともあります。

正式な医学用語ではありませんが、気温の急激な変化によって誘発される喘息症状を指す言葉として使われています。

特徴としては:

  • 朝晩だけ咳が出る
  • 外出時・帰宅時に悪化
  • 天気や気温によって症状が変わる
  • 暖かい室内では比較的楽

といった点が挙げられます。

海風が喘息に与える影響

次に、横浜特有の「海風」について見てみましょう。

横浜の海風の特徴

横浜の海風は、冷たく、湿度が高いのが特徴です。

冬の海風は、海水温の影響で陸地より冷たい空気を運んできます。しかも、海からの風なので湿度も高い。

この「冷たく湿った空気」が、実は気道にとってはかなりの刺激になります。

湿った冷気が気道に与える刺激

「湿度が高いなら、気道に良いんじゃないの?」

そう思いますよね。でも実は、冷たい湿気は気道を刺激します

乾燥した冷気も良くないですが、湿った冷気も気道の粘膜に負担をかけるんです。

特に:

  • みなとみらいの海沿いを歩くとき
  • 山下公園や赤レンガ倉庫周辺
  • 横浜港の近く

こういった場所では、海風の影響を強く受けます。

風速と喘息症状の関係

また、風の強さも重要です。

環境省の「花粉症環境保健マニュアル2022」でも、風速が喘息症状に影響することが指摘されています。

風が強いと:

  • 冷たい空気が一気に気道に入る
  • 体感温度が下がる
  • 呼吸が乱れやすい

といった影響が出ます。

横浜、特に湾岸エリアは風が強い日が多いため、これらの影響を受けやすいんです。


横浜エリア別・寒暖差リスクマップ

それでは、横浜市内のエリアごとに、具体的なリスクを見ていきましょう。

横浜駅周辺エリア

まず、横浜駅周辺です。

地下街から地上への気温差

横浜駅には、ポルタ・ジョイナス・そごうなど、広大な地下街があります。
地下街は暖房が効いていて快適ですが、問題は地上に出たときの気温差です。

例えば:

  • 地下街:20度(暖房で快適)
  • 地上:5度(風が強い)

この15度の温度差を、数秒で体験することになります。

これは、気道にとってはかなりの負担です。

駅ビル内の暖房と外気の温度差

また、駅ビル(JR横浜タワー・ルミネ・NEWoManなど)も同じです。

ビル内:快適な温度

外に出る:冷たい風

この急激な温度変化が、喘息を悪化させます。

通勤時の注意点

したがって、横浜駅を利用する方は:

✅ 地下街から出る前に、上着を着る
✅ マフラーやネックウォーマーを準備しておく
✅ 深呼吸して、呼吸を整えてから外に出る

といった工夫が有効です。

みなとみらい・関内エリア

次に、みなとみらい・関内エリアです。

海沿いの風の強さ

このエリアの最大の特徴は、海風がとにかく強いことです。

特に:

  • グランモール公園の遊歩道
  • 赤レンガ倉庫周辺
  • 山下公園
  • 象の鼻パーク

こういった海沿いのエリアでは、風速が5〜10mになることも珍しくありません

気温が10度でも、風速10mなら体感温度は0度になります。

高層ビルの谷間を吹き抜ける風

さらに、みなとみらいには高層ビルが林立しています。

このビルの谷間を風が吹き抜けることで、風速がさらに強まる「ビル風」が発生します。

結果として:

  • 突風が吹く
  • 風向きが急に変わる
  • 予想以上に冷たい

といった状況になります。

オフィス街ならではのリスク

また、みなとみらいのオフィスで働く方は、ランチや外出時のリスクも考慮が必要です。

暖かいオフィス → 冷たい外気 → また暖かいオフィス

このような温度変化の繰り返しは、気道に大きな負担をかけます。

内陸部(新横浜・青葉区・緑区など)

一方、内陸部はまた違ったリスクがあります。

海風の影響が少ないが放射冷却が強い

内陸部は海から離れているため、海風の影響は少ないです。

しかし、その代わりに放射冷却による冷え込みが強いんです。

特に晴れた日の朝は、気温が氷点下近くまで下がることもあります。

朝の冷え込みが厳しい

したがって、内陸部にお住まいの方は、朝の冷え込み対策が重要です。

例えば:

  • 起きたらすぐに暖房をつける
  • 寝室の温度を保つ
  • 朝の外出時は特に防寒を徹底

といった対策が有効です。

エリアごとの対策の違い

まとめると、横浜市内でもエリアによって対策が異なります:

エリア主なリスク重点対策
横浜駅周辺地下街と地上の気温差上着・マフラーの準備
みなとみらい・関内海風・ビル風風対策・体感温度の意識
内陸部朝の放射冷却朝の暖房・防寒

自分が住んでいる・働いているエリアの特性を知ることが、対策の第一歩です。


横浜で働く・暮らす喘息患者さんのための対策

それでは、具体的な対策を見ていきましょう。

通勤時の対策

まず、通勤時です。

横浜駅の地下街を活用する

横浜駅を利用する方は、できるだけ地下街を通るのがおすすめです。

地下街を使えば:

  • 外の冷たい風を避けられる
  • 温度変化が緩やか
  • 雨の日も濡れない

といったメリットがあります。

ただし、地下街から出るときの温度差には注意が必要です。出る前に上着を着ましょう。

マフラー・ネックウォーマーで首元を守る

次に重要なのが、首元の防寒です。

冷たい空気を直接吸い込まないよう、マフラーやネックウォーマーで首元をカバーします。

これだけで:

  • 吸い込む空気が少し温められる
  • 気道への刺激が和らぐ
  • 咳が出にくくなる

といった効果があります。

特に、みなとみらいや海沿いを歩く方は必須アイテムです。

朝の外出時間帯の工夫

また、可能であれば外出時間帯を調整するのも有効です。

朝の最も冷え込む時間帯(6:00〜8:00)を避けて、少し遅めに出勤できれば、気温が上がっているため楽になります。

もちろん、仕事の都合もあるので難しい場合もありますが、フレックスタイムなどを利用できる方は検討してみてください。

服装の工夫

次に、服装です。

重ね着(レイヤリング)の重要性

横浜の2月は、1日の気温差が大きいため、重ね着が基本です。

おすすめの重ね着:

  1. インナー(ヒートテックなど)
  2. シャツ
  3. セーター・カーディガン
  4. ジャケット・コート

このように、脱ぎ着しやすい服装にしておくことで、気温の変化に対応できます。

脱ぎ着しやすい服装

特に重要なのが、脱ぎ着のしやすさです。

例えば:

  • 前開きのカーディガン
  • ジップアップのパーカー
  • マフラー(ストールより調整しやすい)

こういったアイテムを選ぶと、温度変化に素早く対応できます。

「ちょっと暑いかな」くらいがちょうどいい

また、外出時は「ちょっと暑いかな」と感じるくらいの防寒がおすすめです。

なぜなら:

  • 外に出た瞬間の冷気に対応できる
  • 体温が下がりにくい
  • 気道への刺激が少ない

からです。

「暑かったら脱げばいい」くらいの気持ちで、しっかり防寒しましょう。

海沿いを歩くときの注意

次に、海沿いを歩くときです。

みなとみらいの遊歩道は風が強い

みなとみらいの海沿いの遊歩道は、景色は良いですが風がとても強いです。

特に:

  • グランモール公園の海側
  • 赤レンガ倉庫周辺
  • 象の鼻パーク

こういった場所では、できるだけ風を避けるルートを選びましょう。

例えば:

  • 建物沿いを歩く
  • 地下道を使う
  • 風の弱い時間帯を選ぶ

といった工夫が有効です。

マスク着用で冷気を和らげる

また、マスクの着用も効果的です。

マスクをすることで:

  • 吸い込む空気が少し温められる
  • 湿度が保たれる
  • 気道への刺激が緩和される

といったメリットがあります。

特に、海風が強い日はマスクを忘れずに。

室内環境の管理

最後に、室内環境です。

暖房の使い方

室内の暖房も、急激な温度変化を避けることが大切です。

おすすめの使い方:

  • 起きる30分前にタイマーで暖房ON
  • 寝る直前まで暖房をつけておく
  • 外から帰ったら、急激に暖めすぎない

特に、朝起きたときの室温は重要です。

寒い部屋で目覚めると、そこから外出までずっと気道が冷えた状態になってしまいます。

加湿と換気のバランス

また、加湿も重要ですが、横浜は元々湿度が高めのため、加湿しすぎにも注意が必要です。

目安:

  • 湿度50〜60%を維持
  • 加湿器の掃除をこまめに
  • 換気は朝晩の短時間で

このバランスを保つことが大切です。

朝起きたらすぐに暖房をつける

繰り返しになりますが、朝の暖房は本当に重要です。

目覚めた瞬間から気道を冷やさないよう、タイマー機能を活用しましょう。

また、可能であれば:

  • 寝室も暖めておく
  • 廊下・洗面所も暖房を
  • トイレも寒くないように

といった工夫をすると、より快適に過ごせます。


こんな症状があれば早めに受診を

以下のような症状がある場合は、早めに呼吸器内科を受診することをおすすめします。

横浜特有の症状パターン

✅ 朝の通勤時、横浜駅を出た瞬間に咳が出る
→ 地下街と地上の気温差による気道刺激の可能性

✅ みなとみらいの海沿いを歩くと息苦しくなる
→ 海風による気道過敏性の亢進

✅ 横浜の朝だけ咳がひどい
→ 寒暖差と放射冷却の影響

✅ 天気や気温によって症状が大きく変わる
→ 気温差喘息の可能性

✅ いつもの吸入薬で効きが悪い気がする
→ 季節や気候に合わせた治療調整が必要かも

一般的な受診の目安

また、一般的な受診の目安としては:

✅ 咳が3週間以上続いている
✅ 夜間・明け方に症状が悪化する
✅ 市販の咳止めで改善しない
✅ 会話中・電話中に咳き込む
✅ 過去に喘息の治療歴があるが、現在は治療していない

といった症状がある場合です。

「これくらいで受診していいのかな?」

そう思ったら、それが受診のタイミングです。

特に、横浜の気候に関連した症状がある場合は、気候を理解した呼吸器専門医に相談することをおすすめします。


執筆者情報

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

  • 緩和ケア研修会修了医
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)
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