- 3月 10, 2025
- 3月 11, 2025
風邪ってなんだ?特に花粉症の時期は感染症の正確な診断が難しくなる。
風邪です!って言うのはかなり難しいのはご存知ですか?
花粉症の季節は特に難しいのです。なぜでしょうか?
本日はそんなお話。
医師がウィルス感染っぽい、細菌感染っぽいってどのように判断してその後の検査を選択しているかご存知でしょうか。簡単に申し上げると、ウィルス感染は複数の場所への感染、細菌感染は単一の場所への感染となることが特徴でそれらを問診等で聞き取り判断しているのです。例を挙げつつみてみましょう。
38度の発熱+のどの痛みの患者さんを想像して下さい。
1:原因がウィルス感染だとすると以下のような訴えになります。
昨日から喉が痛くて、咳も出て、鼻水が出ると言うような訴えです。
2:原因が細菌感染だとすると以下のような訴えになります。
昨日から喉がすごく痛いが、咳も鼻水もない。
コロナウィルス感染症の時の症状、散々テレビで取り上げられていたのを覚えていますか?症状が多彩でしたよね。多彩な症状が出る要因はウィルスは複数の場所に同時に感染を起こすからです。複数の場所というのは鼻粘膜、咽頭、喉頭、下気道、肺などが挙げられます。一方で、細菌感染症は基本的に単一の場所への感染ですから、喉が痛いという訴えのみになる訳です。
このようなことを研修医の時に教わるのです。がしかし、実臨床はそうは簡単にはいきません。花粉症の人が、細菌感染で喉が痛くなっていたとします。季節は3月。病院に来ると、訴えは、発熱、咽頭痛、鼻水となる訳です。なんだったら、鼻水が多すぎて喉に垂れ込み咳が出ることもある訳です。
そうです。花粉症の時期の風邪診断や感染症診断ってすごく難しいのです。
じゃあどうするの?というと喉の視診、頚部の触診、胸部の聴診、ウィルスなどの流行状況、家族などの関係が近い人たちの症状の有無など参考にする訳です。風邪の診断が100%の確信を持って出来る医師はまずいません。いたら逆に胡散臭いです。ですから、ウィルス感染の可能性が高いと判断した患者さんは解熱鎮痛剤や喉の炎症止め、咳止め、痰切りなどの対症療法薬で経過をみて頂き、改善がなければもう一度再診して頂くというのが正しい在り方になります。ご存じの通りウィルス感染には抗生剤は効果はありません。不用意な抗生剤処方はしないというのが大切です。ちなみに、喘息や間質性肺炎など肺に何らかの基礎疾患がある場合はウィルス感染の可能性が高くても、マクロライド系抗生剤(クラリスやエリスロシン)が処方されることがあります。
また、呼吸器内科の専門分野である細菌性肺炎はどうでしょうか?細菌性肺炎は単一臓器への感染ですから、基本的に主訴は発熱+咳+痰といった症状になる訳です。しかし、花粉症の人の肺炎は、発熱+鼻汁+咳+痰になる訳です。重症花粉症の人は咽頭痛を認めることもあり、その場合は、発熱+鼻汁+咽頭痛+咳+痰になったりします。もうね訳わからないですよね。では、どのように鑑別するのでしょうか。肺炎が怪しいような咳痰の強さ、熱の高さ、聴診所見の有無、症状の経過、世間の感染流行状況などを参考に少しでも怪しければ画像検査を行うことになります。何でもかんでも検査をすればいいというものでもないのは確かですが、正確に診断・治療を行うことで少しでも早く、そして確実に健康に戻って頂きたいという思いがあるのもご理解いただきたいところです。当院は呼吸器内科クリニックという性質上、検査をお願いすることが多いです。担当医より検査の必要性・検査費用などの説明が不十分で、ご意見を頂いた事がありました。よって、今後は費用一覧を各診療室に設置し、画像検査の必要性を説明するとともに、検査前に費用を明示するように運用を変更いたしました。
ちなみに、少し話はズレますが、ここ数年、熱がなく、軽度の咳程度の症状でも胸部レントゲン写真+CT検査を行い肺炎と診断されることが多々あります。肺炎=高熱が一般医学常識だったのですが明らかにこれが覆っています。肌感覚では肺炎患者の3割くらいは無熱のように思います。その多くがCTを撮像してみないとわからないような陰影です。これは、CTを設置している他の呼吸器内科クリニックの先生方ともよく話に出ることで、理由はよく分かっていません。