• 9月 13, 2026

9月は喘息発作が一年で最も増える月|横浜の呼吸器専門医が理由を解説

喘息の発作による救急受診や入院は、一年のうち9月にもっとも多くなることが知られています。海外では「9月喘息(September Asthma Epidemic)」と呼ばれ、複数の国で同じ傾向が報告されています。

夏のあいだ症状が落ち着いていた方ほど、この時期の変化に気づくのが遅れがちです。この記事では、なぜ9月に発作が集中するのか、そして今のうちに何をしておくべきかを解説します。

単一の原因ではなく、複数の要因が同じ時期に重なることが背景にあります。

これがもっとも大きな要因です。夏は気温が安定し、症状が出にくい季節です。そのため「調子がいいから」とコントローラー(長期管理薬)の吸入を自己判断で減らしたり、やめてしまう方が増えます。

コントローラーは、症状がないときも気道の炎症を抑え続けるための薬です。中断すると自覚症状がないまま炎症が再燃し、外部から刺激が加わったときに一気に発作として現れます。9月はその刺激が集中する時期にあたります。

受診間隔が空いてしまい、薬が切れたまま過ごしていたというケースも少なくありません。

新学期が始まり、人との接触が増えることで風邪をひく機会が増えます。とくにライノウイルスは秋に流行し、喘息の急性増悪を引き起こす代表的なウイルスです。

気道の炎症が抑えられている状態であれば、風邪をひいても発作までは至らないことが多くあります。しかし炎症が残っている気道にウイルス感染が加わると、症状が急激に悪化します。

夏に繁殖したダニが、夏の終わりから秋にかけて寿命を迎えます。その死骸やフンが細かく砕けて室内に舞い、9月から10月にアレルゲン量のピークを迎えます。

喘息のアレルゲンとして問題になるのは生きているダニよりも死骸とフンなので、涼しくなってダニが減ったように見える時期こそ、吸い込む量は多くなります。

ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどの花粉が8月下旬から10月にかけて飛散します。スギ花粉より粒子が小さく、鼻を通り抜けて気管支まで届きやすいため、鼻症状より咳や息苦しさとして現れることがあります。

朝晩と日中の気温差が広がると、気道の平滑筋が収縮しやすくなります。台風や低気圧の通過で気圧が下がると、気道の粘膜がむくみやすくなります。9月はどちらも起こりやすい月です。

発作は突然起こるように感じられますが、多くの場合その前に気道の状態は変化しています。以下のような変化は、コントロールが崩れ始めているサインです。

  • 発作止め薬(短時間作用型β2刺激薬)を使う回数が増えてきた
  • 夜間や早朝に咳で目が覚めることがある
  • 階段や坂道で以前より息切れするようになった
  • 笑ったとき、話し続けたときに咳が出る
  • 冷たい空気を吸い込むと胸が締めつけられる

とくに発作止め薬を週2回以上使っている状態は、コントロール不十分と判断されます。この段階で受診すれば、多くの場合は薬の調整だけで済みます。

ACTスコアで確認する

喘息コントロールテスト(ACT)は、5つの質問に答えて25点満点で評価するツールです。20点未満であればコントロールが不十分な状態、19点以下であれば定期受診を待たずに診察を受けることが推奨されます。

自分の感覚と実際の気道の状態は一致しないことがあります。「まあまあ大丈夫」と感じていても、点数にすると不十分だったというケースは珍しくありません。

コントローラーを再開・継続する

夏に自己判断で中断してしまった方は、まず受診してください。中断期間が長いほど気道の炎症が進んでいる可能性があり、再開の仕方も医師の判断が必要です。

効果が安定するまでには時間がかかります。9月に入ってから慌てるより、今のうちに整えておくことで冬まで安定させやすくなります。

寝具のダニ対策を先に済ませる

アレルゲン量がピークを迎える前に、寝具の洗濯、布団乾燥機の使用、防ダニカバーの導入を済ませておくと効果的です。カーペットの丸洗いも同様です。

エアコンのフィルターを掃除する

冷房から暖房に切り替わる前のこの時期に清掃しておくと、暖房開始時にカビの胞子を室内に拡散させずに済みます。

インフルエンザワクチンの予定を立てる

喘息のある方は、インフルエンザにかかると発作を起こしやすくなります。10月からの接種に向けて、今のうちに予定を確認しておいてください。

気道の炎症を長期間放置すると、気道が硬く厚くなって狭いまま元に戻らなくなる「リモデリング」が進みます。ここまで進むとコントローラーが効きにくくなり、正常な気管支に戻すことはできません。

呼吸機能の低下速度にも差が出ます。1秒間に吐ける空気の量(1秒量)は年齢とともに誰でも減っていきますが、コントロールが良好な方が年間13ml程度の減少にとどまるのに対し、治療を怠っている場合は年間40〜60ml以上減少するとされています。

毎年9月に体調を崩すことを繰り返しているなら、それはコントロールが十分でないというサインです。FeNOや呼吸機能検査で現在の状態を数値で確認し、治療内容が今の気道に合っているかを見直す価値があります。

  • FeNO(呼気NO検査):気道炎症の程度を数値で確認
  • スパイロメトリー・呼吸抵抗測定:気道の狭さを客観的に評価
  • ACTスコアによるコントロール評価:受診ごとに変化を追います
  • 吸入手技の確認:正しく吸えているかをその場でチェック
  • 治療薬の調整:季節と症状に合わせた見直し
  • 生物学的製剤:標準治療で安定しない重症喘息への対応
  • インフルエンザワクチン:10月以降の接種に対応

こんな方は早めにご受診ください
・夏のあいだに吸入薬をやめてしまった
・発作止め薬を週2回以上使っている
・夜間や早朝に咳で目が覚める
・毎年9月から10月に体調を崩している
・しばらく定期受診をしていない
・ACTスコアが20点未満だった

夏に吸入薬をやめてしまいました。今から再開して大丈夫ですか?

自己判断で再開するより、一度受診して現在の気道の状態を確認することをおすすめします。中断期間によっては炎症が進んでいる可能性があり、以前と同じ薬・同じ量が適切とは限りません。FeNOや呼吸機能検査で評価したうえで再開する薬を決めます。

症状がないのに受診する必要はありますか?

あります。喘息は症状がないときも気道に炎症が残っていることがほとんどで、その状態を放置すると気道リモデリングが進みます。定期的に検査を受けてコントロール状態を確認することが、将来の呼吸機能を守ることにつながります。

発作止め薬を週に何回使ったら受診すべきですか?

週2回以上使用している場合はコントロール不十分と判断されます。使用頻度が増えているのは気道の炎症が抑えられていないサインなので、コントローラーの見直しが必要な可能性があります。早めにご相談ください。

横浜で喘息のコントロール状態を評価してもらえますか?

横浜フロントクリニックでは、ACTスコア・FeNO・スパイロメトリーを組み合わせた評価を行っています。結果に応じて吸入薬の調整、アレルゲン免疫療法、生物学的製剤といった選択肢をご相談いただけます。横浜駅西口から徒歩圏内です。

横浜フロントクリニック
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町1-41 THE YOKOHAMA FRONT 3F
TEL:045-577-0121

横浜駅西口から徒歩圏内。お仕事帰りや週末のご受診も可能です。

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)

医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)

難病指定医(呼吸器)

緩和ケア研修会修了医

医学博士

日本内科学会認定内科医

日本呼吸器学会 呼吸器専門医

日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医

日本医師会認定産業医

厚生労働省認定 臨床研修指導医

  • 日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン2024』
  • Global Initiative for Asthma (GINA) Report 2024
  • 独立行政法人環境再生保全機構「ぜん息悪化を防ぐために」
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