- 5月 29, 2026
重症喘息の生物学的製剤|横浜で受診から投与開始までの流れを呼吸器専門医が解説

「吸入薬を毎日使っているのに、発作が繰り返される」「ステロイドの内服を繰り返していて、副作用が心配」——重症の喘息を抱えながら、こうした状況が続いている方がいます。
そのような方に選択肢のひとつとして提示できるのが、生物学的製剤による治療です。ただし、生物学的製剤は「どのクリニックでも受けられる治療」ではなく、基本的に呼吸器専門医のいる施設でしか取り扱いができません。
この記事では、生物学的製剤とは何か、どのような流れで治療が始まるのかを解説します。
生物学的製剤とは何か
生物学的製剤とは、喘息の炎症に関わる特定のタンパク質(サイトカインや免疫グロブリンなど)を標的にして働く注射薬です。従来の吸入ステロイドや気管支拡張薬とは異なり、炎症の根本的なメカニズムに直接作用します。
現在、日本で重症喘息に保険適用されている主な生物学的製剤は以下の通りです。
| 製剤名 | 主な標的 | 投与方法 |
|---|---|---|
| ゾレア(オマリズマブ) | IgE(免疫グロブリンE) | 2〜4週ごとに皮下注射 |
| デュピクセント(デュピルマブ) | IL-4・IL-13 | 2週ごとに皮下注射 |
| ファセンラ(ベンラリズマブ) | IL-5受容体 | 最初の3回までは4週ごと、以降8週ごとに皮下注射 |
| ヌーカラ(メポリズマブ) | IL-5抗体 | 4週ごとに皮下注射 |
| テゼスパイア(テゼペルマブ) | TSLP抗体 | 4週ごとに皮下注射 |
これらはいずれも、タイプ2炎症(好酸球性炎症)が関与する重症喘息に対して有効性が認められています。どの製剤が適しているかは、血液検査(好酸球数)やFeNOの値、症状の特徴などによって判断します。
誰でも受けられるわけではない理由
生物学的製剤の保険処方には、施設基準と患者側の適用条件の両方を満たす必要があります。
施設側の条件
一般的には呼吸器専門医もしくは専門医と同等の呼吸器アレルギー疾患の臨床経験がある医師が在籍し、重症喘息の管理経験を有する施設であることが求められます。呼吸器専門医が在籍していない一般内科クリニックでは対応できないケースがほとんどです。
患者側の適用条件(例)
製剤によって異なりますが、共通する要素として以下が挙げられます。
- 高用量吸入ステロイドを含む複数の薬剤を使用しても症状がコントロールできていない
- IgE値・血中好酸球数が一定の基準を満たしている
- 年齢・体重などの製剤ごとの基準を満たしている
「生物学的製剤を試したい」と思っても、まずこれらの条件を専門医が評価する必要があります。
受診から投与開始までの流れ
横浜フロントクリニックを含むフロントクリニックグループでの標準的な流れをご説明します。
STEP 1|初診・問診
現在の治療内容・発作の頻度・これまでの経緯を確認します。他院からの紹介状・お薬手帳・直近の検査データがあればお持ちください。
STEP 2|検査・評価
血液検査(好酸球数・IgE値など)・FeNO(呼気NO検査)・スパイロメトリー(呼吸機能検査)・呼吸抵抗検査、そして必要に応じて胸部単純写真撮影、CT撮影を当日実施します。これらの結果をもとに、呼吸器専門医が生物学的製剤の適用可否と最適な製剤を判断します。
STEP 3|治療方針の説明・同意
適用と判断された場合、製剤の種類・投与スケジュール・費用・副作用について詳しく説明します。患者さんが納得したうえで投与を開始します。
STEP 4|投与開始
初回は院内で皮下注射を行い、一定時間経過観察します。製剤によっては自己注射が可能になるものもあります。
STEP 5|定期的な効果確認
投与開始後も定期的に呼吸機能・FeNO・呼吸抵抗、自覚症状の変化を追います。効果が不十分な場合は製剤の変更や追加治療を検討します。
なぜ専門医への受診が必要なのか

生物学的製剤は高価な薬剤であるため、適切な適応基準の判断と効果のモニタリングが欠かせません。「とりあえず試してみる」ではなく、検査データに基づいて最も効果が期待できる製剤を選ぶことが、治療の成果につながります。
また、複数の製剤が存在する現在、どれを選ぶかは炎症のタイプ(タイプ2炎症の中でも好酸球優位かIgE優位か、非タイプ2炎症はありそうかなど)によって異なります。FeNOや血液検査の結果を総合的に判断できる呼吸器専門医のもとで治療を受けることが重要です。
横浜フロントクリニックで対応できること
、横浜フロントクリニックでは、呼吸器専門医のもとでゾレア・デュピクセント・ファセンラ・ヌーカラ・テゼスパイアの保険処方に対応しています。
- 適用評価に必要な検査を当日完結:FeNO・血液検査・呼吸機能検査・胸部CT
- 複数製剤に対応:炎症タイプに合わせた製剤選択が可能
- 投与後のフォローアップ:定期的な効果測定と治療調整
- 他院からのセカンドオピニオンにも対応:「今の治療で本当にいいのか確認したい」という相談も歓迎
受診の目安・タイミング
⚠ こんな方はご相談ください
・高用量の吸入ステロイドを使っても発作が繰り返される
・経口ステロイドを年に2回以上使用している
・ステロイドの副作用(骨粗しょう症・血糖上昇など)が心配
・生物学的製剤に興味があるが、どこで受けられるかわからない
・他院で「対応できない」と言われた
生物学的製剤は、重症喘息の治療において大きな選択肢のひとつです。まずは検査で適用条件を確認することから始められます。気になる方はお気軽にご相談ください。
よくある質問
生物学的製剤はどのくらいの費用がかかりますか?
保険適用の場合、自己負担額は製剤の種類・体重・投与間隔によって異なります。高額療養費制度の対象となるため、一定額を超えた分は払い戻しを受けられます。詳しくは診察時にご説明します。
他院で治療中ですが、横浜フロントクリニックに相談できますか?
はい、セカンドオピニオンも含めてご相談を受け付けています。現在の治療内容や検査データをお持ちいただければ、より詳しい評価が可能です。
生物学的製剤はずっと続けなければいけませんか?
症状の安定状況によっては、医師と相談のうえで中断を検討できるケースもあります。ただし自己判断での中止はリスクがあるため、必ず専門医と相談してください。
ゾレア・デュピクセント・ファセンラ・ヌーカラ・テゼスパイアのどれが自分に合うかわかりますか?
FeNO・血中好酸球数・IgE値などの検査結果をもとに、最も適した製剤を専門医が判断します。当院では適用評価に必要な検査を当日実施できます。
リモデリングは進行してからでは対処が難しくなります。
早い段階で気道の炎症状態を評価し、治療を最適化することが将来の肺機能を守ることにつながります。

執筆者情報
井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。
フロントクリニックグループ一覧
- 三浦メディカルクリニック
- 横浜フロントクリニック
- 東京品川フロントクリニック
- 自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病指定医(呼吸器)
参考資料
- 日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン2024』
- Global Initiative for Asthma (GINA) Report 2024
- 各製剤添付文書(ゾレア・デュピクセント・ファセンラ・ヌーカラ)