• 8月 29, 2026

秋に喘息が悪化する原因を検査で特定する|横浜の呼吸器専門医が解説

秋は、春とは異なる種類の花粉が飛ぶ季節です。しかもこの時期は、花粉以外の悪化要因も重なります。「秋はいつもこんなもの」と毎年やり過ごしているとしたら、そこには対処できる原因が隠れているかもしれません。

この記事では、秋に喘息が悪化する仕組みと、原因を検査で特定する意味について解説します。

春のスギ花粉と秋のブタクサ花粉の粒子サイズと到達部位の比較

8月下旬から10月にかけて飛散する代表的な花粉は、ブタクサ・ヨモギなどのキク科、カナムグラ(アサ科)です。イネ科の花粉も地域によっては秋まで飛びます。

春のスギ・ヒノキと大きく違うのが、粒子の大きさと飛ぶ距離です。

粒子が小さく、気管支まで届きやすい

スギ花粉の直径がおよそ30マイクロメートルであるのに対し、ブタクサ花粉は20マイクロメートル前後とより小さくなります。粒子が小さいほど鼻でとらえきれず、下気道——つまり気管支まで入り込みやすくなります。

このため秋の花粉症では、鼻水やくしゃみといった鼻の症状より、咳や息苦しさが前面に出ることがあります。「鼻はそれほどでもないのに咳だけ続く」という訴えは、この時期に特に多く聞かれます。

飛散距離が短く、身近な場所が発生源になる

スギ花粉が数十キロ単位で飛来するのに対し、ブタクサやヨモギは数百メートル程度しか飛びません。裏を返せば、自宅や職場、通勤路のすぐ近くに生えている雑草が原因になっているケースが多いということです。河川敷、空き地、道路脇、公園の草むらなどが主な生育場所です。

散歩やジョギングのコース、通学路を変えるだけで症状が軽くなる方もいます。

秋に喘息を悪化させる4つの要因

秋に喘息が悪化しやすいのは、複数の要因が同時期に重なるためです。

ダニアレルゲンが一年でもっとも増える

ダニそのものは高温多湿の夏に繁殖のピークを迎えます。そして夏の終わりから秋にかけて、大量に発生したダニが寿命を迎え、その死骸やフンが細かく砕けて室内に舞います。

喘息のアレルゲンとして問題になるのは、生きているダニよりもこの死骸とフンです。つまり9月から10月は、室内のダニアレルゲン量が一年でもっとも多くなる時期にあたります。花粉対策として窓を閉め切ると、今度は室内のダニアレルゲンにさらされるという難しさもあります。

寒暖差が気道を刺激する

朝晩と日中の気温差が大きくなると、気道の平滑筋が収縮しやすくなります。おおむね7度以上の温度差で症状が出やすくなるとされ、「寒暖差咳嗽」と呼ばれることもあります。

気圧の変動も同様です。秋は台風や低気圧の通過が多く、気圧が下がると気道の粘膜がむくみやすくなります。「天気が崩れる前日から息苦しい」という方は、この影響を受けている可能性があります。

感染症が流行し始める

気温の低下と空気の乾燥により、風邪・インフルエンザ・マイコプラズマ肺炎などが流行を始めます。ウイルス感染は喘息の急性増悪の最大の引き金のひとつです。

これらが同時に押し寄せるため、秋は「例年より咳がひどい」と感じる方が増えます。

ここまで読んで、「原因が多すぎて何をすればいいかわからない」と感じた方もいるかもしれません。だからこそ、自分にとって何がアレルゲンなのかを特定することに意味があります。

成人の喘息は、大きく「タイプ2炎症型」と「ノンタイプ2炎症型」に分けられます。両方の特徴をあわせ持つ方もいます。全体の約8割を占めるとされるタイプ2炎症型はさらに細かく分かれ、好酸球という白血球が関与して炎症を起こすタイプ、ダニやハウスダストなどのアレルゲンに反応して症状が出るタイプ、その両方を併せ持つタイプがあります。

アレルゲンが関与しているタイプであれば、原因を特定して生活のなかから取り除くことが治療の一部になります。逆に、アレルゲンが関与していないタイプであれば、掃除を頑張っても症状は変わりません。同じ「秋に悪化する喘息」でも、必要な対策が違うということです。

検査でわかること

特異的IgE抗体検査(血液検査)
ダニ・カビ・花粉・動物など、特定のアレルゲンに対するIgE抗体がどれくらいつくられているかを調べます。その物質がアレルギー反応を引き起こしている原因かどうかを判定できます。

FeNO(呼気一酸化窒素)
息を吐くだけで、気道に炎症があるかどうかを数値で確認できます。20以上で気道に炎症がある可能性、35以上で喘息の可能性が高いと考えられます。吸入ステロイドが効きやすいタイプかどうかの判断材料にもなります。

血中好酸球数
アレルギー性の炎症と関係する細胞の数を調べます。300以上で喘息の関与が考えられることがあります。

呼吸機能検査・呼吸抵抗(R5)
気道がどの程度狭くなっているかを客観的に評価します。R5は深く息を吸ったり吐いたりする必要がなく、楽に測れる検査です。

秋の花粉(ブタクサ・ヨモギ・カナムグラ)

飛散距離が短いため、生育場所に近づかないことが最も有効です。河川敷や空き地の草むらを避け、外出時はマスクとメガネを着用します。帰宅時に玄関で衣服を払い、洗濯物は室内干しに切り替えると室内への持ち込みを減らせます。

ダニ・ハウスダスト

寝具が最大の発生源です。週1回以上の洗濯、布団乾燥機の使用、防ダニカバーの活用が基本になります。カーペットやラグはダニの温床になりやすいため、症状が強い方はフローリングへの変更を検討する価値があります。掃除機はゆっくりかけるほど吸引効率が上がります。

カビ

アスペルギルスとアルテルナリアは喘息の重症化との関連が明らかになっており、優先して調べたほうがよいアレルゲンです。浴室・洗面所・エアコン内部・窓のサッシが発生しやすい場所です。冷房から暖房に切り替える前のフィルター清掃をおすすめします。

ペット

ネコとイヌが原因として多いものです。飼っていない方でも、衣服に付着したアレルゲンを介して反応することがあります。

昆虫

ガ、チャタテムシ、ゴキブリなどもアレルゲンになります。ホコリのなかに生息し湿気を好むため、対策はダニ・カビ対策と重なります。近年はチャタテムシが注目されています。

環境の調整はあくまで補助的な対策です。喘息の根本的なコントロールには、気道の炎症を抑えるコントローラー(吸入ステロイド)の継続が欠かせません。

「環境を整えたのに改善しない」「発作止め薬を使う回数が増えている」という場合は、現在の治療が炎症を十分に抑えられていない可能性があります。気道の炎症を長期間放置すると、気道が硬く厚くなって元に戻らなくなる「リモデリング」が進み、薬が効きにくくなります。

治療の選択肢としては、吸入薬の変更・追加のほか、ダニアレルギーが関与している場合のアレルゲン免疫療法、高用量の吸入ステロイドでも安定しない重症例に対する生物学的製剤があります。「毎年秋がつらい」という状態が当たり前になっている方こそ、一度治療内容を見直す価値があります。

  • 特異的IgE抗体検査:ダニ・花粉・カビ・ペット・昆虫など原因アレルゲンの特定
  • FeNO(呼気NO検査):気道炎症の程度を数値で確認
  • 呼吸機能検査・呼吸抵抗測定:気道の狭さを客観的に評価
  • 即日CT検査:咳の原因として他の疾患を除外する必要がある場合に対応
  • アレルゲン免疫療法:ダニアレルギーへの根本的なアプローチ
  • 生物学的製剤:標準治療で安定しない重症喘息への対応

こんな方はご相談ください
・毎年秋になると咳や息苦しさが強まる
・鼻症状は軽いのに咳だけが続く
・アレルゲン検査を受けたことがない
・発作止め薬を使う回数が増えてきた
・掃除や環境対策をしても症状が変わらない
・冬に向けてコントロールを安定させておきたい

秋の悪化を抑えておくことは、感染症が流行する冬を安全に過ごすための準備にもなります。症状が強くなる前の受診をおすすめします。

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)

医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)

難病指定医(呼吸器)

緩和ケア研修会修了医

医学博士

日本内科学会認定内科医

日本呼吸器学会 呼吸器専門医

日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医

日本医師会認定産業医

厚生労働省認定 臨床研修指導医

秋の花粉症では、なぜ鼻より咳の症状が出やすいのですか?

ブタクサなど秋の花粉はスギ花粉より粒子が小さく、鼻でとらえきれずに気管支まで入り込みやすいためです。そのため鼻水やくしゃみより、咳や息苦しさが前面に出ることがあります。咳が長引く場合は喘息の関与も考えられます。

アレルゲン検査は何を調べればいいですか?

症状の出る時期と生活環境から絞り込みます。通年性の症状があればダニ・ハウスダスト・カビ・ペットを、季節性であればその時期に飛ぶ花粉を優先します。同じ科に属する花粉は代表的なひとつを調べれば足りることが多く、無駄な項目を省いて検査できます。受診時にご相談ください。

秋は窓を閉めるべきですか、換気すべきですか?

花粉の飛散が多い日中は窓を閉め、飛散が落ち着く早朝や雨上がりに短時間の換気を行うのが現実的です。ただしこの時期は室内のダニアレルゲンも多いため、換気をまったくしないのも得策ではありません。空気清浄機の併用が助けになります。

横浜で喘息のアレルゲン検査を受けられますか?

横浜フロントクリニックでは、特異的IgE抗体検査によるアレルゲンの特定、FeNO検査、呼吸機能検査に対応しています。結果に応じてアレルゲン免疫療法や生物学的製剤といった治療の選択肢もご相談いただけます。横浜駅西口から徒歩圏内です。

参考資料

  • 日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン2024』
  • 環境省「花粉症環境保健マニュアル」
  • 独立行政法人環境再生保全機構「ぜん息悪化を防ぐために」
  • Global Initiative for Asthma (GINA) Report 2024
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