• 10月 18, 2025

こんな時どうする? 睡眠時無呼吸症候群 Q&A~ 呼吸器専門医が答えます【前編】~

はじめに

「夜中に“息が止まっている”と家族に言われた」「いびきがうるさいと指摘された」「日中どうしても眠くなる」。こうした悩みをご相談される方は少なくありません。
もしかすると、それは 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS) が原因かもしれません。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が断続的に止まる病気であり、自覚しにくいことが特徴です。
しかし、放置してしまうと日中の生活だけでなく、心臓や血管など全身に悪影響を及ぼすことが知られています。

一方で、早期に気づき、適切に治療すれば、眠りの質や集中力が改善し、仕事や生活のパフォーマンスを大きく向上させることができます。

本記事では、患者さんからよく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。

前編では、睡眠時無呼吸症候群の仕組み、リスクが高い人の特徴、放置することの危険性などを中心に解説します。

「もしかして自分もそうかも?」と思う方は、ぜひ最後までお読みください。


Q1. 睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気?

A. 睡眠中に呼吸が止まる、または弱くなる状態が繰り返される病気です。

具体的には、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸する空気の量が通常の70%以下に低下する「低呼吸」が断続的に起こります。

これにより体内の酸素濃度が下がり、脳や心臓が覚醒状態に引き戻され、深い眠りを維持できなくなります。

その結果、日中の強い眠気、集中力の低下、倦怠感、頭痛 などが現れるほか、交通事故や仕事上のミスにつながることもあります。

主な原因は「気道(空気の通り道)」が狭くなる、もしくは塞がってしまうこと。

肥満、顎の形(下顎が小さい・後退している)、扁桃腺や舌根の肥大、鼻づまりなどが代表的な要因です。


Q2. どんな人がなりやすいですか?

A. 体の特徴や生活習慣によって発症リスクが高まります。

以下のような条件に当てはまる方は注意が必要です。

  • 肥満傾向がある(特に首まわりに脂肪がつきやすい)
  • 顎が小さい、下顎が後ろに引っ込んでいる
  • 扁桃腺や舌根が大きい
  • 加齢により筋肉がゆるみやすくなっている
  • アルコールや睡眠薬を使用している(気道を閉じやすくする)
  • 喫煙習慣がある、または鼻づまり・アレルギーがある

ただし、これらのリスクがなくても発症するケースはあります。

「いびきが大きい」「朝すっきり起きられない」「日中ぼんやりする」といった症状があれば、
一度検査を受けてみることをおすすめします。


Q3. 自分で気づけるサインはありますか?

A. 次のような症状や生活上の変化があれば要注意です。

  • 家族やパートナーから「呼吸が止まっている」と言われた
  • いびきが大きく、一定のリズムではなく途中で途切れる
  • 夜中に息苦しさで目が覚めることがある
  • 夜間に何度もトイレに起きる
  • 朝起きたときに頭痛や喉の渇きを感じる
  • しっかり寝たはずなのに疲れがとれない
  • 日中の強い眠気、集中力低下、うたた寝が多い

これらが複数当てはまる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと考えられます。

特に「いびきが止まる」「日中の眠気が強い」という2点は典型的なサインです。


Q4. 放置するとどうなりますか?

A. 命に関わる合併症につながることがあります。

睡眠中に呼吸が止まる状態が続くと、体は酸素不足と覚醒を繰り返し、血圧や心拍数が何度も上昇します。

この慢性的なストレスが、以下のような疾患を引き起こすリスクを高めます。

  • 高血圧・動脈硬化
  • 心筋梗塞・心不全・心房細動
  • 脳卒中
  • 糖尿病・メタボリックシンドローム
  • 認知機能の低下・うつ症状
  • 交通事故(居眠り運転など)

SASは「静かな生活習慣病」とも呼ばれるほど、知らぬ間に全身へ負担をかけます。

特に高血圧や糖尿病の治療をしても数値がなかなか改善しない場合、背後に睡眠時無呼吸症候群が潜んでいることもあります。


Q5. どんな検査でわかりますか?

A. 自宅でできる簡易検査と、医療機関での精密検査があります。

まずは「簡易検査(スクリーニング検査)」で、寝ている間の呼吸状態や酸素濃度を測定します。

多くのクリニックでは、指先や鼻にセンサーをつけるだけで、自宅で1晩検査が可能です。

結果により、さらに詳しい「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」を行うことがあります。

こちらも当院であれば自宅で検査が可能ですので、余分な入院費を支払わずにすみ、検査代が節約できます。

検査を経て重症度が判断され、治療方針が決定されます。


Q6. 治療でどんなことをしますか?

A. 原因や重症度に応じて、生活習慣の改善から医療機器までさまざまです。

軽症の場合は体重のコントロール、禁酒・禁煙、睡眠姿勢の工夫(横向きで寝るなど)が効果的です。

中等症以上では「CPAP(シーパップ)療法」という装置を用いることが一般的です。

これは、寝ている間に鼻マスクから空気を送り、気道を広げる治療法です。

装着に慣れるまで時間がかかることもありますが、多くの患者さんが「朝のだるさが消えた」「集中力が戻った」と実感されています。


おわりに

睡眠時無呼吸症候群は、決して珍しい病気ではありません。

日本では中高年男性の約3~4人に1人が何らかの無呼吸を持つともいわれています。
それでも「眠れているから大丈夫」と見過ごされやすく、気づかぬうちに体を蝕むことが少なくありません。

睡眠の質は、人生の質(QOL)そのものに直結します。
「最近、寝起きがつらい」「日中すぐ眠くなる」「いびきを指摘された」

こうしたサインがあれば、ぜひ一度、呼吸器内科や睡眠専門医にご相談ください。
当クリニックでは、患者さま一人ひとりの生活リズムに合わせた検査・治療を行い、安心して日常生活を送れるようサポートしています。

些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。


執筆者情報

尾上林太郎(おのうえ りんたろう)

医療法人社団南州会 理事/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2013年に聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学病院研修医を経て、2015年同大学内科学(呼吸器)大学院入学 呼吸器内科診療助手、2019年同大学院修了 同大学病院呼吸器内科学助教、2024年5月横浜フロントクリニック 院長就任(現職)

【保有資格】

  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病法における難病指定医(呼吸器)
  • 緩和ケア研修会修了医
  • アレルギー舌下免疫療法適正使用管理体制に基づく講義の受講・試験の修了医
  • オンライン診療研修修了医師

井上 哲兵(いのうえ てっぺい) 医師
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。

  • 横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
  • 東京品川フロントクリニック(2026年1月5日開院)
  • 目黒区分院(2026年9月開院予定)
  • 新宿区分院(2027年12月開院予定)

【保有資格・所属学会】

  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)
  • 緩和ケア研修会修了医
横浜フロントクリニック 045-577-0121 ホームページ