• 2月 1, 2026

花粉シーズン前の準備を。喘息患者さんが2月から始めるべき対策を呼吸器内科専門医が解説

「まだ2月だから大丈夫」は手遅れ!スギ花粉は2月上旬から飛散開始

「まだ寒いし、花粉なんてまだ先でしょ?」

そう思っている方も多いかもしれません。しかし、日本気象協会が2026年1月15日に発表した「春の花粉飛散予測(第3報)」によれば、スギ花粉は九州や東海地方では2月上旬から、九州から関東の広い範囲では2月中旬から飛散が始まる見込みです日本気象協会。特に喘息をお持ちの方にとって、花粉は「くしゃみや鼻水」だけの問題ではありません。気道の炎症を悪化させ、喘息発作のリスクを高める重要な要因なのです。

喘息治療の基本は「症状が出る前からのコントロール」です。花粉対策も同じ。症状が出てから慌てるのではなく、飛散開始の2週間前、つまり今、2月からの準備が春を快適に過ごすカギとなります。

今回は、呼吸器専門医の視点から、喘息患者さんが今すぐ始めるべき花粉対策について詳しく解説します。


花粉が喘息を悪化させるメカニズム

タイプ2型炎症と喘息

喘息の多くは「タイプ2型炎症」と呼ばれる免疫反応が関与しています。日本呼吸器学会が発行する「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」によれば、タイプ2型炎症とは、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症です日本呼吸器学会

花粉が体内に入ると、このタイプ2型炎症が活性化され、気道の粘膜が腫れ、痰が増え、気道が狭くなります。その結果、喘息症状が悪化しやすくなるのです。

「花粉症の症状がなくても」喘息は悪化する

意外に思われるかもしれませんが、「くしゃみや鼻水といった花粉症の症状がない」のに、喘息だけが悪化するケースは珍しくありません。

これは、鼻や目に症状が出なくても、気道の粘膜では花粉に対する炎症反応が起きているためです。「自分は花粉症じゃないから大丈夫」と油断していると、気づかないうちに喘息がコントロールできなくなっていることがあります。

日本アレルギー学会が発行する「喘息予防・管理ガイドライン2024」でも、喘息患者における環境アレルゲン(花粉を含む)の管理は重要な治療の柱とされています日本アレルギー学会


2026年の花粉飛散予測と対策スケジュール

日本気象協会の予測:2月上旬〜中旬から飛散開始

日本気象協会の予測では、2026年のスギ花粉飛散は九州や東海地方で2月上旬から、九州から関東の広い範囲では2月中旬から始まる見込みです。北陸から東北にかけては2月下旬から3月中旬に飛散開始となる予想です日本気象協会

また、2026年春の花粉飛散量は、西日本では例年並みの所が多い一方、東日本と北日本では例年より多く、非常に多い所もある見込みとされています。

ヒノキ花粉は3月下旬から4月上旬がピークとなり、地域によっては5月初旬まで続きます。

「飛散開始前」から始める対策の重要性

環境省が発行する「花粉症環境保健マニュアル2022」では、花粉症や喘息の治療において「初期療法」という考え方が推奨されています環境省。これは、症状が出る前、あるいは症状が軽いうちから治療を開始することで、シーズン中の症状を大幅に軽減できるという治療戦略です。

具体的には、飛散開始の約2週間前から抗アレルギー薬を開始することが推奨されています。つまり、2月上旬~中旬に飛散が始まるなら、今、1月下旬~2月初旬から対策を始めるべきなのです。


シーズン前から始める!喘息患者さんのための花粉対策

初期療法:症状が出る前からの治療開始

抗アレルギー薬の早期開始

抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬といった抗アレルギー薬は、症状が出る前から飲み始めることで効果を最大化できます。

特に抗ロイコトリエン薬(モンテルカストなど)は、喘息治療にも使われる薬であり、気道の炎症を抑える効果があります。花粉による喘息悪化を予防する上で非常に有効です。

日本アレルギー学会の「アレルゲン免疫療法の手引き2025」でも、スギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎あるいは喘息における適切な薬物治療の重要性が強調されています日本アレルギー学会

点鼻ステロイドの併用

鼻症状がある方は、点鼻ステロイド薬の使用も効果的です。鼻粘膜の炎症を抑えることで、口呼吸を減らし、気道への花粉の侵入を軽減できます。

なぜ「症状が出る2週間前」なのか

薬の効果が十分に現れるまでには時間がかかります。また、炎症が本格化してから対処するよりも、炎症が起こる前にブロックする方が、はるかに効率的で症状も軽くなることが臨床研究で示されています。

環境省の「花粉症環境保健マニュアル」でも、花粉飛散開始前からの治療開始が推奨されています環境省

日常生活での実践的対策

外出時の工夫

  • マスクの着用:不織布マスクで花粉を物理的にブロック
  • 眼鏡の使用:花粉が目に入るのを防ぐ(普通の眼鏡でも効果あり)
  • つるつるした素材の服:ウールなどは花粉が付着しやすいので避ける
  • 帽子の着用:髪に花粉が付着するのを防ぐ

帰宅時のルーティン

  • 玄関前で服を払う:室内に花粉を持ち込まない最初の関門
  • すぐに手洗い・うがい・洗顔:顔や手についた花粉を早めに落とす
  • できればすぐに入浴:髪や体についた花粉を完全に洗い流す
  • 服はすぐに洗濯、または部屋干し:外干しは花粉が付着するためNG

室内環境の整備

  • 換気のタイミング:飛散の多い昼前後は避け、早朝や夜間に短時間で
  • 空気清浄機の活用:HEPAフィルター搭載のものが効果的
  • こまめな掃除:床や家具に落ちた花粉を除去
  • 寝室の徹底管理:枕カバーやシーツはこまめに洗濯

これらの対策は、環境省の「花粉症環境保健マニュアル2022」でも推奨されている科学的根拠に基づいた方法です環境省


こんな症状があれば早めに受診を

花粉シーズンに入り、以下のような症状が現れた場合は、早めに呼吸器専門医を受診することをお勧めします。

受診の目安となる症状

  • 咳が増えてきた、特に夜間や明け方
  • 痰が絡むようになった
  • 息切れや胸の苦しさを感じる
  • 普段使っている発作時の吸入薬の使用回数が増えた

これらは喘息のコントロールが悪化しているサインです。「そのうち良くなるだろう」と放置すると、重症化や喘息発作につながる可能性があります。

日本アレルギー学会の「喘息予防・管理ガイドライン2024」でも、定期的な症状モニタリングと早期の治療介入が推奨されています日本アレルギー学会


呼吸器専門医からのアドバイス

花粉症治療と喘息治療は「連携」させる

花粉症と喘息は別々の病気ではなく、同じタイプ2型炎症の異なる現れ方です。そのため、治療も別々に考えるのではなく、連携させることが重要です。

例えば、抗ロイコトリエン薬は鼻症状にも喘息症状にも効果があります。また、点鼻ステロイドで鼻粘膜の炎症を抑えることが、間接的に気道の炎症を軽減することにもつながります。

重症例では生物学的製剤という選択肢も

従来の治療でコントロールが難しい重症花粉症の場合、生物学的製剤 ゾレアという治療選択肢があります。

適応ケースが複雑ですが、うまく使ってあげると花粉シーズンでも安定したコントロールを維持できる可能性が高まります。

ガイドラインに基づいた適切な治療を

フロントクリニックグループでは、日本呼吸器学会や日本アレルギー学会のガイドラインに基づいた、エビデンス(科学的根拠)のある治療を提供しています。

患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた、オーダーメイドの治療計画をご提案いたします。


まとめ:「早めの対策」が春の快適さを左右する

花粉シーズンを快適に過ごすためには、「症状が出てから対処する」のではなく「症状が出る前に備える」という考え方が何より重要です。

特に喘息患者さんにとって、花粉は単なる不快な症状の原因ではなく、命に関わる喘息発作のリスクを高める要因でもあります。

日本気象協会の予測によれば、2026年は特に東日本と北日本で花粉飛散量が多くなる見込みです。今、1月下旬~2月初旬から始める初期療法と日常の対策が、3月・4月の過ごしやすさを大きく左右します。

最後に

「薬を増やすのは不安」「毎日続けるのは面倒」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、適切な対策を早めに始めることで、結果的にシーズン中の薬の使用量を減らせたり、症状が軽く済んだりすることが多いのです。

また、自己判断での薬の中断や減量は、症状悪化のリスクを高めます。調整が必要な場合は、必ず医師に相談してください。

不安や疑問があれば、いつでも横浜フロントクリニックへご相談ください。呼吸器専門医として、皆さまの快適な春をサポートいたします。


参考文献:

  • 日本気象協会「2026年 春の花粉飛散予測(第3報)」2026年1月15日
  • 環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」
  • 日本呼吸器学会「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」
  • 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」
  • 日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き2025」
  • 日本アレルギー学会「アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き2025」

執筆者情報

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

  • 三浦メディカルクリニック
  • 横浜フロントクリニック
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  • 目黒区分院(2026年9月開院予定)
  • 新宿区分院(2027年12月開院予定)

【保有資格・所属学会】

  • 緩和ケア研修会修了医
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)
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