• 2月 21, 2026

横浜駅周辺、実は喘息持ちには厳しい環境です

「横浜駅を通るたびに咳が出る」
「地下街を歩くと息苦しくなる」
「バスターミナル近くで喉がイガイガする」

こんな経験、ありませんか?

横浜駅は1日約220万人が利用する日本第3位のターミナル駅です(JR東日本データ、2024年度)。つまり、東京・大阪に次ぐ規模の「人と空気が密集する場所」なのです。

しかも、横浜駅には6路線が乗り入れ、広大な地下街(ポルタ、ジョイナス、相鉄ジョイナス)があり、バスターミナルからは排気ガスが絶えず流れ込み、さらに周辺は常時工事中

今回は、横浜駅周辺の空気環境が気道に与える影響を、呼吸器専門医の視点から解説します。「なんとなく調子が悪い」を放置せず、正しく理解して対策しましょう。


横浜駅の空気環境、何が問題なのか?

1-1. 日本有数の人口密度

横浜駅の1日平均乗降客数は約220万人。朝夕のラッシュ時には1平方メートルあたり5〜7人が密集することもあります(東京メトロ混雑率調査参考)。

人が地下街や建物内や電車内に密集すると、二酸化炭素(CO₂)濃度が上昇し、酸素(O₂)濃度が低下します。つまり、空気が「薄く」「息苦しく」なるのです。

環境省の基準では、室内CO₂濃度は1,000ppm以下が望ましいとされていますが、通勤ラッシュ時の駅構内では1,500〜2,000ppmを超えることもあります(環境省『建築物環境衛生管理基準』)。2000ppmを超えると頭痛や眩暈の原因になることが分かっています。

1-2. 地下街の空気特性

横浜駅の地下街は総面積約5万平方メートルで、常時数千人が滞在しています。

地下空間の特徴:

  • ✅ 換気が不十分になりがち
  • ✅ 外気温との差が20℃以上になることも
  • ✅ 化学物質(香水、芳香剤、清掃剤)が滞留しやすい
  • ✅ 粉塵(衣服の繊維、ホコリ)が舞いやすい

したがって、地下街は気道に刺激を与えやすい環境なのです。

1-3. バスターミナルと排気ガス

横浜駅東口・西口には大規模なバスターミナルがあり、1日数百台のバスが発着します。

バスの排気ガスには以下が含まれます:

  • 窒素酸化物(NOx) ← 気道粘膜を刺激
  • 微小粒子状物質(PM2.5) ← 肺の奥まで到達
  • 一酸化炭素(CO) ← 酸素運搬を妨害
  • 揮発性有機化合物(VOC) ← アレルギー反応を誘発

実際、横浜市環境創造局の大気測定データでも、横浜駅周辺はPM2.5やNOx濃度が市内平均より高い傾向が確認されています(横浜市環境創造局『大気環境常時監視測定結果』2025年度)。

1-4. 周辺道路の交通量

横浜駅周辺には国道1号線・国道16号線が走り、1日あたり数万台の車両が通過します。

つまり、横浜駅周辺は排気ガスの”ホットスポット”なのです。

1-5. 駅ビル・商業施設の空調問題

駅ビル(ルミネ、NEWoMan、CIAL)や百貨店(高島屋、そごう)は、強力な空調で換気性を保っていますが、実は換気をすることでかえって気道に刺激になることがあります

問題点:

  • ✅ 外気との温度差が20℃以上
  • ✅ 湿度が30%以下になることも(冬季)
  • ✅ 排ガスなどの化学物質が充満
  • ✅ 空気の乾燥が粘膜バリアを低下させる

したがって、「換気をしっかりしているから快適」ではなく、横浜という土地柄、気道にとっては刺激的な場所なのです。


人混みが呼吸に与える影響

2-1. CO₂上昇とO₂低下

人が密集すると、呼気によりCO₂濃度が上昇し、O₂濃度が低下します。

通常の大気

  • O₂ 約21%
  • CO₂ 約0.04%

混雑した駅構内や建物

  • O₂ 19〜20%(やや低下)
  • CO₂ 0.15〜0.20%(約5倍)

この状態では、呼吸が浅く速くなり、気道過敏性のある方は咳や息苦しさを感じやすくなります。

2-2. ストレスと自律神経

人混みは心理的ストレスも与えます。ストレスは交感神経を優位にし、気道を収縮させる作用があります。

つまり、「人混みで息苦しい」のは気のせいではなく、生理的な反応なのです。

2-3. 対策

  • ✅ 息苦しいなと感じた時は深呼吸を意識(浅くて早い呼吸は厳禁)
  • ✅ マスク着用(気道内の湿度を保つ)
  • ✅ ラッシュ時を避ける(可能なら時差通勤)

地下街の空気特性と対策

3-1. 換気の限界

地下街は機械換気に頼っていますが、膨大な人数をカバーしきれないことがあります。

実際、環境省の調査でも、地下街のCO₂濃度は地上より10〜20%高いことが報告されています(環境省『地下街の環境衛生管理に関する調査』)。

3-2. 化学物質の滞留

地下街には多数の店舗があり、香水・芳香剤・清掃剤などの化学物質が滞留しやすい環境です。

これらは気道粘膜を刺激し、咳や喉のイガイガを引き起こします。

3-3. 粉塵

衣服の繊維、ホコリ、食品の微粒子などが舞いやすく、気道に入り込むと炎症を引き起こします。

3-4. 対策

  • ✅ 地下街の滞在時間を最小限に
  • ✅ 定期的に地上で外気を吸う
  • ✅ マスク着用
  • ✅ 喘息の場合は吸入薬の長期的使用

排気ガスが喘息を悪化させるメカニズム

4-1. NOx(窒素酸化物)

NOxは気道粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こします。また、好酸球を活性化させ、喘息を悪化させます。

4-2. PM2.5(微小粒子状物質)

PM2.5は直径2.5μm以下の微粒子で、肺の奥(肺胞)まで到達します。

PM2.5が肺に入ると:

  • ✅ 炎症性サイトカインを放出
  • ✅ 気道過敏性を亢進
  • ✅ 喘息発作のリスクを上昇

世界保健機関(WHO)は、PM2.5濃度が10μg/m³上昇するごとに喘息発作リスクが約3%増加すると報告しています(WHO『Air Quality Guidelines 2021』)。

4-3. CO(一酸化炭素)

COはヘモグロビンと結合し、酸素運搬を妨害します。その結果、組織の酸素不足を引き起こし、息苦しさや疲労感の原因になります。

4-4. VOC(揮発性有機化合物)

VOCはアレルギー反応を誘発し、喘息症状を悪化させます。


対策を一緒に考えましょう

5-1. ルート選択

  • ✅ 地下街を避け、地上を歩く
  • ✅ バスターミナルを迂回
  • ✅ 風上側を歩く(排気ガスを避ける)

5-2. 時間帯調整

  • ✅ ラッシュ時(7:30〜9:00、17:00〜19:00)を避ける
  • ✅ 早朝や昼間の移動を検討

5-3. マスク選びと使用方法

  • ✅ 不織布マスク(基本)
  • ✅ マスクは使い捨てを心がける。ヨレヨレになるまで使わない。

5-4. 吸入薬の適切な使用

重症の喘息患者さんは、毎日に吸入を忘れずに使用することで、症状を予防・軽減できます。

ただし、必ず医師と相談してください。

5-5. 深呼吸とリラックス

人混みや排気ガスにさらされた後は、外気の良い場所で深呼吸しましょう。腹式呼吸で副交感神経を優位にし、気道をリラックスさせます。


こんな症状があれば早めに受診を

以下のような症状がある方は、早めに呼吸器専門医にご相談ください

  • 横浜駅を通るたびに咳が出る
  • 地下街で息苦しくなる
  • バスターミナル近くで喉がイガイガする
  • 駅を出た後も咳が続く 夜間・明け方に咳で目が覚める
  • 吸入薬の効きが悪くなった

これらは気道過敏性が亢進しているサインです。放置すると、喘息発作や慢性炎症につながります。


横浜フロントクリニックでは

当院は横浜駅直通という立地で、横浜駅周辺の環境を熟知した呼吸器専門医が診療しています。

7-1. 環境を理解した診療

「横浜周辺特有の環境が気道に与える影響」を理解し、あなたの生活環境に合わせた治療を提案します。

7-2. 即日検査・即日診断

  • ✅ 胸部CT検査
  • ✅ 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
  • ✅ 呼気NO測定(気道炎症の評価)

これらを1回の受診で完了でき、その日のうちに診断・治療方針を確定できます。


横浜駅周辺の環境、対策のポイント

  • ✅ 横浜駅は日本第3位のターミナル駅、人と空気が密集
  • ✅ CO₂上昇・O₂低下・排気ガス・化学物質が気道を刺激
  • ✅ 地下街・バスターミナルは特にリスクが高い
  • ✅ ルート選択・時間帯調整・マスク・吸入薬で対策を
  • ✅ 症状が続く場合は早めに受診

【FAQ】よくある質問

Q1. 横浜駅の空気は他の駅より悪いのですか?
A1. 横浜駅は日本第3位の乗降客数で、地下街・バスターミナルが広大なため、人口密度と排気ガス濃度が高い傾向があります。ただし、他の大型ターミナル駅(東京駅、新宿駅など)も同様のリスクがあります。

Q2. 地下街と地上、どちらが気道に優しい?
A2. 一般的には地上の方が当然ですが空気の質が良く、CO₂濃度も低いです。ただし、地上はバスターミナルや幹線道路の排気ガスにさらされるため、風上側を選ぶことが重要です。

Q3. マスクはどれを選ぶべき?
A3. 不織布マスクを使用しましょう。使い捨てを心がけてくださいね。

Q4. 毎日横浜駅を利用していますが、対策は必要ですか?
A4. 症状がなければ過度に心配する必要はありませんが、咳・息苦しさ・喉のイガイガがある場合は、早めに対策を講じることをお勧めします。喘息の方は吸入を忘れずに使用することを心がけましょう。

Q5. 対策しても症状が続く場合は?
A5. 気道過敏性が亢進している可能性があります。呼吸器専門医に相談し、吸入ステロイド薬が必要かどうかの検査が必要です。

Q6. 治療すれば横浜駅を快適に利用できますか?
A6. はい。適切な治療と対策で、多くの方が快適に利用できるようになります。


【参考文献】

  1. JR東日本「駅別乗車人員ランキング2024年度」
  2. 横浜市環境創造局「大気環境常時監視測定結果2025年度」
  3. 環境省「建築物環境衛生管理基準」
  4. 環境省「地下街の環境衛生管理に関する調査」
  5. WHO『Air Quality Guidelines 2021』
  6. 日本呼吸器学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」 https://www.jrs.or.jp/
  7. 日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2024」 https://www.jsaweb.jp/modules/journal/index.php?content_id=4

執筆者情報

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

  • 緩和ケア研修会修了医
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)
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