- 11月 23, 2025
65歳以上の方にはコロナワクチン接種を今一度検討頂きたい理由。
インフルエンザが猛威を奮っており昨年よりも早いペースでワクチン接種が進んでいます。一方でコロナワクチンは例年の8割程度とどまっています。接種を希望されない方へその理由を伺ったところ以下のような内容でした。
1:7回も接種したからもういいでしょ。
2:コロナってまだワクチン必要なの?弱毒化したんでしょ?
3:子供に接種するなと止められている。
4:周りが接種しないから。
5:副反応が怖い。
みなさま、これを聞いてどう思いますか?その通りだ!と思う方も多いのではないでしょうか。
このような発言の根底にあるものは恐らく、『コロナは弱毒化した』があるのではないでしょうか。
しかし、本当にコロナって弱毒化したのでしょうか?
実は、日本における全死亡者の死亡理由の順位が毎年、厚生労働省から発表されています。コロナで死亡した人の順位は何位で、何人くらいかご存知でしょうか。
2024年死亡理由と人数 (厚生労働省発表)
第1位 癌 約38万人
第2位 心疾患 約22万人
第3位 老衰 約20万人
第4位 脳血管疾患 約10万人
第5位 肺炎 約8万人
第6位 誤嚥性肺炎 約6万人
第7位 不慮の事故 約4万5千人
第8位 新型コロナ感染症 約3万5千人
ちなみに3万5千人の死亡者の年齢的内訳は、97%が65歳以上となっています。
この結果からみなさまにお伝えしたいのは、若年者にとってみたら、ただの風邪で済むかもしれませんが、65歳以上の方にとっては死亡するリスクが高い、しっかりと対策すべき疾患であるということです。
65歳以上のご家族を持つ若い世代の方、65歳以上のご家族にコロナワクチンはもう要らないんじゃない?って気軽に伝えてませんか?その一言が致命的な事態を引き起こす可能性まで考えていますか?
ちなみにインフルエンザで死亡する方は毎年2000人程度です。
ですから、死亡者数の視点からみた場合、インフルは接種するけどコロナは接種しないというのは合理性がないのです。
ではコロナワクチンの有効性はどうでしょうか?
日本の2024年10月から2025年3月までの11都府県11か所の病院で行われた、ワクチンがどれくらい入院を防ぐ事ができたかをまとめた論文があります。なんと、接種なしの患者と比較して72.9%も入院予防効果が認められたとの結果になりました。これは驚くべき数字です。また、過去の接種歴がある人と、最新のワクチンを接種した人では63.2%も入院予防効果があったと報告されています。
NEJM(ニューイングランドジャーナル:海外有名医学誌)に、米国の退役軍人を対象に新型コロナワクチン追加接種とインフルエンザワクチンの接種を同時に受けた16万4132人と、インフルエンザワクチンのみを接種した13万1839人を追跡調査した研究が報告されています。これによると、新型コロナワクチンのブースターとインフルエンザワクチンを両方受けた退役軍人は、インフルエンザワクチンのみを接種した人に比べ、6カ月間で救急外来受診が29%、入院が39%、死亡が64%少なかったとの結果でした。他の海外データでは死亡予防効果が70%以上あるとの報告もあります。
そして皆さんが気にしがちな安全性はどうでしょうか。SNSなどでさまざまな情報が錯綜しており、惑わされがちになってしまうのはよく分かりますが、基本的には、ファイザー・モデルナなどのm RNAワクチンも、武田薬品の不活化ワクチンも高い安全性が報告されております。確かに、さまざまな副反応のことをこれでもかとクローズアップし、そして主作用がまるでないかのうような論調の論文も報告されておりますが、それはほんの一部です。全部ではありません。むしろ、副反応は従来のワクチンとあまり差がなく、極めて安全性も有効性も高いと評価する論文の方が大半を占めています。一部を切り取ってSNSなどで誇張しながら英雄気取りで解説する素人に決して惑わされないでください。前にもブログで書いた事がありますが、天気予報を思い浮かべてください。明日の天気は雨100%とテレビの気象予報士が言っていたとします。でも、5歳の子供が靴占いで晴れだったよと言ってきました。あなたはどちらの天気予報を信用しますか?SNSの素人に惑わされないようにしてくださいね。
時々、某有名国立大学医学部元教授などと言う煌びやかな肩書を持った人が色々ワクチンの悪口を言ったりしていますが、そのような論調の医師はガチで医学会で腫れ物扱いになっています。
このような記事を書くと自院、自法人への利益誘導をしているなどと言われてしまうかもしれないので一言申し添えますと、私たちの法人で接種しなくても大丈夫です。ワクチンのメーカーは病院によって違います。他の病院で接種を検討していただいて一向に構いません。この記事を書いた最大の理由は、65歳以上の方がこの記事を読んで今一度接種を検討していただきたいからです。重症化しにくい若い人たちと一緒になって接種しなーい!って言っていると、いざコロナに感染した時に痛いめを見るのはどちらかをよく考えてください。
ちなみに、コロナワクチンは自治体によって値段が異なりますが、ほとんどの自治体で一人当たり1万円前後の接種補助を65歳以上の人に出しています。1万円ですよ!?。国から1万円の補助や支給があるものってそんなにないですよね。お米券や2万円の支給をするのでも大揉めなのに。1万円の補助を出してでも、ワクチン接種をしてもらい、入院を防いでもらった方が結果的に医療費の削減につながるのです。入院したらそれこそ100万円単位の医療費がかかるわけですから。
井上 哲兵(いのうえ てっぺい) 医師
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
- 横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
- 東京品川フロントクリニック(2026年1月5日開院)
- 目黒区分院(2026年9月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病指定医(呼吸器)