- 12月 13, 2025
感染症が喘息発作の引き金に。冬は「咳の放置」が危険です。
――「風邪のあとに咳が続く」の本当の理由
冬になると、喘息をお持ちの方の中には、
- 風邪が治ったと思ったのに咳だけ残る。(インフル後やコロナ後は特に。)
- 夜から朝方にかけて息苦しさが悪化する
- 急に冷たい空気を吸うと胸が締め付けられる
こうした変化を感じる方が多くなります。
これは決して珍しいことではなく、医学的にも冬は喘息症状が悪化しやすい季節であることが分かっています。
これらの原因の中で、特に気をつけて頂きたいのが、風邪の原因である何らかのウィルス感染をきっかけに気道の炎症が強くなり、それがキッカケで喘息のコントロールが悪化してしまうことです。
感染症が喘息を悪化させる理由
インフルエンザ、コロナなどを含むウィルス感染症は、気道(空気の通り道)に炎症を引き起こします。
感染自体が治まっても、気道の内側には次のような状態が残ります。
- 粘膜のむくみ
- 過剰な分泌物
- 咳反射の神経が敏感な状態
- 気道を囲む筋肉が過反応な状態
このため、普段は何ともない刺激――冷たい空気、運動、PM2.5、花粉、タバコの煙――でも咳が止まらなくなってしまうのです。
これは医学的に「感染後気道過敏性亢進(Airway Hyper-responsiveness)」と呼ばれ、特に喘息患者の方では重くそして長引きやすいという特徴があります。
「風邪が治ったのに咳だけ残る」という状態は、まさにこのメカニズムによるものです。
喘息は「治す病気」ではなく『コントロールしていく病気・一生付き合っていく病気』
ほとんどの方は「症状がある=悪い」「症状がない=治った」と考えがちです。
しかし喘息は、症状がなくても、適切な治療を続けていかないと気道にダメージを蓄積していく病気です。
そのため症状が落ち着いたからといって治療をやめてしまうと、
- 気道炎症が再び強くなる
- 感染症や刺激で発作が起きやすくなる
- 少しずつ呼吸機能(肺の能力)が低下していく
という悪循環が起こります。
この悪循環から抜け出せないでいると、気道そのものが変形してしまう“気道リモデリング”が起こり、治療薬を増やしてもコントロールが出来なくなることがあるのです。
だからこそ、症状が落ち着いている時でも治療継続が必要であり重要と言えるのです。
冬にできる具体的な喘息コントロール
① 薬を勝手に中断しない
吸入薬は「症状を抑える」のではなく、「炎症を静かにし呼吸機能を守る」薬です。
② ワクチン接種
インフルエンザやコロナ、RSなどのウィルス感染は喘息の悪化因子です。
感染予防は喘息治療の延長線上にあります。
③ 加湿と換気
湿度は50〜60%程度が理想です。乾燥した空気は気道刺激になります。
④ 風邪を引いた後、咳が2週間以上続く場合は受診
「治りかけの風邪」ではなく、治療介入の必要な状態かもしれません。
喘息は、症状が出ているときだけ問題になる病気ではありません。
症状が落ち着いている日にも、気道では炎症が続き、少しずつ呼吸機能に変化が起きていきます。
だからこそ、診断・治療・経過観察には精度が求められます。
しかし、現状として日本では呼吸器専門医は多くなく、呼吸器疾患を専門的に診られる医療機関は限られているのが実情です。
また、喘息や慢性咳の診療では、「聴診だけではわからない領域」が多く存在します。
たとえば、
- 咳が本当に喘息から来ているのか
- 肺炎や気管支拡張症を合併していないか
- 長引く咳の裏に別の疾患が隠れていないか
これは問診や症状だけでは判断できません。
喘息に似た症状を引き起こす病気は多数あり、
“喘息の治療をしているのに改善しない”=診断が十分でない可能性もあります。
三浦半島・横浜駅・品川駅に構えるフロントクリニックグループでは、
フロントクリニックグループでは、呼吸器専門医による診療に加え、診断に必要な検査を即日に実施できる体制を整えています。
必要な場合、来院当日に以下の検査が可能です。
● CT検査(即日撮影・当日読影)
「咳が続く」「治療しているのに改善しない」「発作が多い」などの場合、胸部CTは治療方針を判断するために非常に重要です。
CTでは、レントゲンでは見えにくい
- 末梢気道の炎症
- 副鼻腔炎の有無(喘息と関連)
- 気管支拡張症
- 肺炎・間質性変化
- 過inflation(肺の過膨張)
などを詳細に確認できます。
外部医療機関で予約して後日撮影、結果はさらに翌週――
という流れは珍しくありませんが、当院では撮影から評価まで同日対応できるため、治療開始までの時間を短縮できます。
● 呼吸機能検査(スパイロメトリー)
気道の狭さや肺機能を数値化します。
症状のない時期の変化も確認できます。● FeNO(気道炎症の可視化)
「咳の原因が喘息か、感染症か、治療が効いているのか」を判断できます。
● アレルギー検査
誘因を可視化することで、治療・生活指導・悪化予防につながります。
● 個別カスタム吸入治療調整
吸入薬は種類・量・手順・デバイスによって効果が大きく異なります。
「正しく使えているか」「合っているか」まで含めて設計します。
● 生物学的製剤を含む治療選択肢
重症例、これまで治療効果が不十分だった方にも選択肢があります。
「診察を受けても変わらない」その原因は、治療精度かもしれません
喘息は、一度診断がついたら終わりではなく、
“定期的に評価し、生涯に渡り治療を継続する病気”です。
しかし現実には、
- 薬を継続しているのに症状が安定しない
- 季節ごとに悪化を繰り返す
- 何年経っても「本当にコントロールできているのか分からない」
という患者さんは少なくありません。
それは“あなたの努力不足”ではありません。
それは――治療を支える設備・検査・専門性が不足しているだけかもしれません。
喘息は、適切な治療環境があると、
「発作を避ける治療」から「息苦しさを忘れて過ごせる生活」へ変わります。
最後に
冬に症状が悪化しやすいのは「体が弱い」のではなく、
喘息という病気の特性です。
調子が悪い日があっても、治療を続けていること自体が、将来の呼吸・肺・全身状態を守る投資です。
息のしやすさは、「当たり前」になるまで時間がかかることがあります。
そしてその先には、季節に左右されず生活できる毎日があります。
気になる症状がある時、不安や迷いがある時は、遠慮なくご相談ください。
安心して呼吸できる日常を取り戻すために、私たちが伴走します。
執筆者情報
尾上林太郎(おのえ りんたろう)
医療法人社団南州会 理事/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2013年に聖マリアンナ医科大学卒業後、同大学病院研修医を経て、2015年同大学内科学(呼吸器)大学院入学 呼吸器内科診療助手、2019年同大学院修了 同大学病院呼吸器内科学助教、2024年5月横浜フロントクリニック 院長就任(現職)
【保有資格】
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会呼吸器専門医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病法における難病指定医(呼吸器)
- 緩和ケア研修会修了医
- アレルギー舌下免疫療法適正使用管理体制に基づく講義の受講・試験の修了医
- オンライン診療研修修了医師
井上 哲兵(いのうえ てっぺい) 医師
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
- 横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
- 東京品川フロントクリニック(2026年1月5日開院)
- 目黒区分院(2026年9月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病指定医(呼吸器)