• 8月 2, 2025

喘息の治療の目的は?

喘息患者さんによく『症状が落ち着いたら吸入はやめていいの?』って聞かれます。その答えは、当然『NO』になる訳ですが、なぜやめてはいけないのでしょうか。

喘息治療の目的は短期的な目的と長期的な目的の2つに大別することができます。

⭐️短期的な目的

短期的な目的とは、今ある症状を無くし快適な日常生活に速やかに戻してあげることです。喘息発作で苦しんでいる人は、夜咳で眠れない、横になることすらできない。夜間休めないから日中ぼーっとしてしまい仕事にならないと言った悩みを抱えています。喘息の治療を適切に行うことで数日で落ち着いてくる事がほとんどです。

⭐️長期的な目的は、症状が出ることを予防すること。将来の患者さんのQOL \ADLを守ることにあります。喘息は1回の発作で約40ml、2回の発作で60ml程度の呼吸機能を失うと言われています。呼吸機能は当然ですが有限です。発作の前後で40ml程度の呼吸機能の差が出たとしても気づかない程度ではありますが、長い年月それが続くと仮定すると30年で理論上約1200ml−1800ml失われるわけです。男性で一般的な体格だと1秒量という呼吸機能の指標が3000mlくらいありますが、仮に1800ml失ってしまうと1200mlとなってしまいます。1200mlですと、体重などにもよりますが、階段や坂道を登るのに息切れが出たり、平坦な道ですら息切れを感じて連続歩行が困難になったりする人がいます。

長い年月を考えた時に年1回の発作でも看過できないのはその為です。症状が治まったからと言って安易に通院をやめないように、薬をやめないように心がけましょう。

今の症状コントロールも大事ですが、それ以上に将来の重症化予防の方がもっと大事です。大病がなければ必ず歳をとっていくわけですから、キチンと将来に備えましょう。患者さんといつまでも伴走し喘息の重症化を防ぎ、患者さんの将来を守り抜く、それが呼吸器内科医の使命です。

文責:医療法人社団南州会 理事長 井上哲兵
経歴
2009年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学研修医、同大学呼吸器内科、国立病院機構静岡医療センターにて研鑽を積み、2019年4月医療法人社団南州会理事長就任。同年8月三浦メディカルクリニック開院。2024年5月横浜フロントクリニック開院。2026年1月東京品川フロントクリニック開院。2026年9月目黒区分院開院予定。2027年12月新宿区分院開院予定。
資格・役職
医学博士・日本内科学会認定内科医・日本呼吸器学会呼吸器専門医・日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医・厚生労働省認定臨床研修指導医・身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
難病法における難病指定医(呼吸器)・緩和ケア研修会修了医

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