- 8月 8, 2025
喘息があっても旅行は楽しめる!呼吸器専門医が教える5つの工夫

「旅行に行きたいけれど、喘息があるから不安…」
そう感じている方は少なくありません。気温や湿度の変化、移動の疲れ、花粉、そして吸入薬の管理など、喘息持ちの方にとって旅行は少なからず不安要素を含みます。
しかし、適切な準備と少しの工夫があれば、喘息があっても旅行を十分に楽しむことができます。この記事では、呼吸器内科の専門医が、喘息を持つ方が安心して旅を楽しむための5つのポイントを解説します。
1. 出発前の体調チェックと医師への相談
旅行を計画する際は、まず現在の体調を確認しましょう。最近発作が増えている、咳が長引いているなど、症状が不安定なときは無理をせず、かかりつけ医に相談することが大切です。
特に、次の点は事前に医師と確認しておくと安心です
- 旅行先の気候や標高が喘息に悪影響を及ぼさないか
- 現在使用中の薬の持参方法と保管に関する注意点
- 発作予防のための吸入薬の使用タイミング
- 海外旅行の場合、英文の診断書や薬の説明書の準備
あらかじめ「旅行前チェックリスト」を作成しておくと便利です。
2. 吸入薬と常備薬は必ず手荷物に
旅行中は、思いがけず喘息症状が出る可能性があります。そのため、薬の準備は念入りに行いましょう。
- 日数分+予備の吸入薬を持参 発作時の薬も忘れずに
- 必ず手荷物に入れて常に携帯(スーツケースに入れるのは絶対にNGです。ロストバッケージされたら旅行がその時点で終わります)
- 長距離移動では出しやすい場所に収納
- 同行者にも緊急薬の使い方や場所を共有
基本的に吸入薬は飛行機内に持ち込むことができますが、念のため事前に航空会社に確認しておくとより安心です。
3. 目的地と宿泊環境の選び方にもコツあり
旅行先を選ぶ際は、喘息に配慮した環境かどうかも重要です。以下のような条件を意識して選びましょう。
- 空気が乾燥しすぎていない、または寒暖差の少ない地域
- 標高が高すぎない(山岳地帯などは避けたほうが無難)
- 禁煙ルームがある宿泊施設
- 加湿器や空気清浄機が備えられている宿泊先
- 大気汚染が進んでいる海外地域は避ける。
ホテルに予約時、「喘息持ちのため香料や消臭剤を控えてほしい」と一言伝えるだけで、配慮してくれる場合もあります。
4. スケジュールはゆとりをもって
旅行はつい予定を詰めがちですが、喘息持ちの方は疲れやストレスが発作の引き金になることも。余裕のあるスケジュールを心がけましょう。
- 予定を詰め込みすぎない
- 朝はゆっくりスタートがお勧め(私はゆっくり派です)
- 適度にカフェなどで休憩をとったり、移動中は睡眠に徹する
- 「アレもコレも全部見る」という欲張りな感じではなく、ゆっくりと一つの観光地を楽しむ!と言う意識が大切
疲れすぎない旅こそ、心と体がリラックスできる理想の旅行です。
5. 万が一に備えて情報をまとめておく
発作や体調不良が起こってしまったときに備え、以下のような準備をしておくと冷静に対応できます。
- 保険証、お薬手帳、診断書のコピーを携帯
- 海外旅行なら、日本語対応の医療機関を事前に調べておく
- 海外旅行保険には必ず加入
- スマホのメモに、病歴・薬名・服用タイミングを記録しておく
また、発作時に使う薬の使用タイミングや吸入方法を、自分自身だけでなく家族や同行者にもシェアしておくと、いざという時に慌てずに対応できます。
おわりに|喘息があっても、旅は十分楽しめる
喘息を理由に旅行を諦めてしまうのは、もったいないことです。正しい知識と準備をしていれば、あなたの体に合ったスタイルで旅を楽しむことは十分に可能です。
自然の景色、美味しい食事、大切な人との時間――そうした旅のひとつひとつが、あなたの毎日に活力を与えてくれます。
旅行に行きたいけど不安!と言う方はぜひかかりつけのDr.に相談ください。
執筆者情報
井上 哲兵(いのうえ てっぺい) 医師
医療法人社団南州会 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2009年に聖マリアンナ医科大学医学部を卒業後、同大学の研修医・呼吸器内科を経て、国立病院機構静岡医療センターにて呼吸器診療の研鑽を積む。
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。
同年8月に三浦メディカルクリニックを開院し、以降も以下のクリニックを展開。
- 横浜フロントクリニック(2024年5月開院)
- 東京品川フロントクリニック(2026年1月開院予定)
- 目黒区分院(2026年9月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
- 難病指定医(呼吸器)
- 緩和ケア研修会修了医