- 5月 6, 2025
- 5月 11, 2025
2025年世界喘息dayは5月6日です。今年のテーマは「Make Inhaled Treatments Accessible for ALL」

世界保健機関(WHO)の協力団体である「Global Initiative for Asthma(GINA:日本語読みはジーナと読みます。)」は、1993年に設立されました。GINAは、5月の第1火曜日を世界喘息デー(World Asthma Day: WAD)と定め、毎年テーマを決めて喘息に関する様々な啓発活動をしています。今年のテーマは『Make Inhaled Treatments Accessible for ALL 全ての人々が吸入療法を受けられるように!』です。
喘息は、2億6000万人以上が罹患し、世界中で毎年45万人以上の死亡の原因となっている最も一般的な慢性で非癌で非感染性の疾患の1つです。実はこれらの喘息死のほとんどは予防可能と言われています。
その喘息死の96%が低中所得国で起きている事を知っていますか?吸入薬、特に吸入ステロイドを含む吸入器の入手不足または高コストが主な要因となっています。
一方で日本を含む先進諸国でさえ、高いコストやSNSなどの間違った医療知識の流布等が要因で多くの喘息患者が必須の吸入薬へのアクセスが制限され、その結果、喘息コントロールが不十分になり、予防可能な喘息による死亡が生じているのです。その人数は年間約1000人程度です。
日本の場合は国民皆保険があるため他国よりも医療費の面では圧倒的に優遇されてはいますが、それでも高いと感じる方がいらっしゃるのも現状です。そのような方々を救うための新たな制度が必要なのかもしれません。現在の喘息の公費医療費制度は重症喘息の場合に受けられる小児慢性特定疾患制度(20歳まで利用可能)を利用することで月5000円から1万円程度に医療費を抑えることが可能です。 20歳以降は公費補助は高額療養費制度以外になく、全額自己負担ないし、会社からの医療費補助などを利用する形になります。(小児慢性特定疾患を利用するためには、指定医に診断書を交付してもらい、指定医療機関で治療を受ける必要があります。)
またもう一つ社会問題として考えなければならない事があります。デジタル化が進んだ先進諸国における問題としてキチンと向き合わなければならないのが、間違った医療知識をSNSなどで吹聴する方がいらっしゃる事です。『そのデマの吹聴』でしかない行為を『真実の発信』などと謳い流布している行為は本当に問題だと思います。その『デマ』を本気で信じてしまい、死亡する方がいることを知ってください。『脱ステロイド』通称『脱ステ』などは良い例です。喘息にしろ、アトピー性皮膚炎にしろ、吸入療法・外用療法は一般的な用法用量(厚生労働省で認可されている量)を守って専門医の指示通りに治療すれば、重篤な副作用が生じることは極めて稀です。極めて稀な事を指摘して吸入療法・外用療法が全てを悪とするのは横暴な論理展開と言えます。吸入療法・外用療法で恩恵を受けている人々が大半であることを忘れてはいけません。確かな知識を持って、あなたの主治医と共に自身の喘息と向き合ってください。テレビの天気予報が雨100%、子供の靴占いで出た天気が晴れ。あなたは専門家の意見を受け入れず、専門知識を何も持たない子供の靴占いを信じて傘を持たずに本当に外出しますか?喘息に限らずですが、今抱えている病気・治療法に不安があればまずは、あなたの主治医にキチンと相談してください。それでも不安が残るのであればセカンドオピニオンと言う方法もあります。安易にSNSで流れてくる情報を鵜呑みにしないでくださいね。
『Make Inhaled Treatments Accessible for ALL 全ての人々が吸入療法を受けられるように!』このスローガンは非常に胸にくるものがあります。一人の医師として、呼吸器内科医としてこの名言を一生のスローガンとして毎日の診療に臨みたいと思います。
文責;医療法人社団南州会 理事長 井上哲兵
経歴
2009年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学研修医、同大学呼吸器内科、国立病院機構静岡医療センターにて研鑽を積み、2019年4月医療法人社団南州会理事長就任。同年8月三浦メディカルクリニック開院。2024年5月横浜フロントクリニック開院
資格・役職
医学博士・日本内科学会認定内科医・日本呼吸器学会呼吸器専門医・日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
日本医師会認定産業医・厚生労働省認定臨床研修指導医・身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
難病法における難病指定医(呼吸器)・緩和ケア研修会修了医