- 7月 18, 2026
妊娠中・授乳中の喘息治療|吸入薬は続けるべき?横浜の呼吸器専門医が解説

「妊娠がわかったけれど、喘息の薬を続けていいのか不安」「お腹の赤ちゃんへの影響が心配で、自己判断で吸入薬をやめてしまった」——妊娠中の喘息管理について、こうした不安を抱える方は少なくありません。
結論から言うと、妊娠中に喘息のコントロールが不十分になることの方が、適切に使用される吸入薬よりもリスクが高いとされています。妊娠中だからこそ、専門医のもとで治療を継続することが重要です。
この記事では、妊娠中の喘息管理についてよくある疑問を解説します。
妊娠中に喘息がコントロール不良になるとどうなるのか
妊娠中に喘息発作が起きると、母体だけでなく胎児にも影響が及ぶ可能性があります。発作時に血中酸素が低下すると、胎盤を通じた胎児への酸素供給も不安定になります。
喘息コントロール不良が続くことで報告されているリスクとしては、早産・低出生体重・妊娠高血圧症候群などとの関連が挙げられます。ただし、適切に管理された喘息では、これらのリスクは大きく低減できると考えられています。
「薬を使わずに我慢する」ことが赤ちゃんのためになるわけではなく、むしろ吸入をしっかり使い喘息を適切にコントロールし続けることが母子ともに安全な妊娠・出産につながります。
妊娠中の喘息はどのように変化するのか
妊娠中の喘息の経過は個人差が大きく、一般的に「悪化・不変・改善」がそれぞれ約3分の1ずつ起きると言われています。
悪化しやすい時期として妊娠中期(24〜36週)が多いとされており、妊娠後期(36週以降)には改善する方が多い傾向があります。
ホルモンバランスの変化・横隔膜の挙上による呼吸機能への影響・免疫系の変化などが、妊娠中の喘息経過に影響します。妊娠前からの喘息コントロール状態が良好なほど、妊娠中も安定しやすいとされています。
妊娠中に使える喘息の薬はあるのか

妊娠中の喘息治療に関しては、日本アレルギー学会・産婦人科学会のガイドラインに基づいて判断されます。
吸入ステロイド(ICS)
コントローラーとして使用される吸入ステロイドは、妊娠中でも使用が推奨されています。全身への吸収量が少なく、胎児への影響が低いとされており、妊娠中の喘息管理の基本薬です。妊娠がわかったからといって自己判断で中止することは推奨されません。
β2刺激薬(気管支拡張薬)
短時間作用型β2刺激薬(発作止め薬)は、妊娠中でも使用できるとされています。必要なときに適切に使用することが重要です。
テオフィリン・ロイコトリエン受容体拮抗薬
妊娠中の使用については慎重な判断が必要で、担当医との相談のうえで継続するかどうかを決める必要があります。
経口ステロイド
重症の発作時には使用されることがありますが、長期使用は避けることが基本です。重症喘息で経口ステロイドが必要な場合は、産婦人科・呼吸器内科が連携して管理することが重要です。長期使用によって妊娠高血圧や妊娠糖尿病のリスク上昇、巨大児のリスク上昇が懸念されます。吸入を自己中断し発作が起きるとリスクが高い内服のステロイドを使用することになります。
生物学的製剤
妊娠中の使用については現時点でデータが限られており、個別に慎重な判断が必要です。妊娠を希望している方・妊娠中の方は、必ず担当医に相談してください。治験データでは妊娠患者は除外されており良いも悪いも分かっていないというのが答えになります。有益性投与という形になります。
授乳中の喘息治療はどうすればいいのか
出産後も喘息の治療は継続する必要があります。「母乳を通じて赤ちゃんに薬が移行しないか」という不安から、授乳中に吸入薬を中止してしまう方がいますが、これは推奨されません。
吸入ステロイドの母乳への移行
吸入ステロイドは肺に直接届ける薬であり、全身への吸収量は内服薬と比べて非常に少なく、母乳への移行量も極めて少ないとされています。授乳中も継続使用が推奨されており、自己判断で中止する必要はありません。
β2刺激薬(発作止め薬)
短時間作用型β2刺激薬は授乳中でも使用できるとされています。必要なときに適切に使用することが重要です。
産後の喘息悪化に注意
出産後は育児による睡眠不足・疲労・ストレスが重なり、喘息が悪化しやすい時期です。「産後は赤ちゃん優先で自分の通院を後回しにしがち」という方も多いですが、喘息コントロールが崩れると育児への支障にもつながります。産後も定期的な受診を継続することが重要です。
生物学的製剤と授乳
生物学的製剤の授乳中の使用については、製剤ごとにデータが異なります。使用中の方は授乳開始前に必ず担当医に相談してください。
妊娠中の喘息管理で大切なこと
自己判断で薬をやめない
「赤ちゃんへの影響が心配」という気持ちは自然ですが、自己判断での中止は喘息コントロール悪化のリスクを高めます。薬の変更・中止は必ず医師に相談してから行ってください。
妊娠初期から呼吸器専門医に相談する
妊娠がわかった時点で、産婦人科医と呼吸器専門医の両方に喘息の状態を伝えることが重要です。使用中の薬を見直し、妊娠中に適した治療計画を立てておくことが安心につながります。
発作の引き金を避ける
妊娠中はとくに感染症・アレルゲン(ダニ・カビ・花粉)・煙草の煙・強い香料などの刺激を避けることが重要です。インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種が推奨されています。
呼吸機能の定期的な確認
当院のLINEにてACT検査を定期的に受けることが重要です。悪化を早期に察知するために役立ちます。
なぜ専門医への受診が必要なのか
妊娠中の喘息管理は、産婦人科と呼吸器内科が連携して行うことが理想的です。使用できる薬の選択・発作時の対応・分娩時の注意点など、妊娠の段階に合わせた管理が必要です。
「妊娠中だから喘息の受診を控えていた」という方も、妊娠中こそ専門医への定期受診が重要です。症状が安定していても、3〜4週ごとの受診でコントロール状態を確認することが推奨されています。
横浜フロントクリニックで対応できること
- 妊娠中の喘息管理:妊娠の段階に合わせた治療薬の見直しと継続管理
- FeNO:気道の状態を定期的に数値で確認
- 産婦人科との連携:必要に応じて産婦人科医との情報共有をサポート
- 吸入手技の確認:妊娠中の体型変化に合わせた吸入方法の指導
「妊娠したが喘息の薬をどうすればいいか」「妊娠前から喘息の治療を整えておきたい」という方も、お気軽にご相談ください。
受診の目安・タイミング
⚠ こんな方はご相談ください
・妊娠がわかり、喘息の薬を続けていいか不安
・自己判断で吸入薬を中止してしまった
・妊娠中・産後に喘息の症状が悪化してきた
・授乳中の吸入薬の使用が心配
・妊娠を希望しており、事前に喘息の状態を整えておきたい
・生物学的製剤を使用中で妊娠・授乳を検討している
よくある質問
妊娠中に吸入ステロイドを使い続けても大丈夫ですか?
妊娠中の吸入ステロイドは、ガイドラインでも継続が推奨されています。全身への吸収が少なく胎児への影響が低いとされており、喘息コントロール不良による影響の方がリスクが高いと考えられています。自己判断で中止せず、必ず医師に相談してください。
妊娠中に喘息発作が起きたらどうすればいいですか?
まず発作止め薬(短時間作用型β2刺激薬)を使用し、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診してください。妊娠中の喘息発作は母体・胎児ともに影響があるため、軽症でも早めの対応が重要です。
妊娠を希望していますが、喘息の治療はどうすればいいですか?
妊娠前から喘息を良好にコントロールしておくことが、妊娠中の安定した経過につながります。使用中の薬の妊娠への影響を事前に確認し、必要に応じて薬の調整を行っておくことをお勧めします。妊娠希望の段階で呼吸器専門医に相談してください。
授乳中に吸入ステロイドを使い続けても大丈夫ですか?
授乳中の吸入ステロイドは、母乳への移行量が極めて少なく、継続使用が推奨されています。自己判断で中止せず、必ず担当医に相談してください。産後の睡眠不足・疲労で喘息が悪化しやすい時期でもあるため、産後も定期的な受診を続けることが重要です。
横浜で妊娠中・授乳中の喘息を診てもらえるクリニックはありますか?
横浜フロントクリニックでは、妊娠中・授乳中の喘息管理に対応しています。使用中の薬の見直し・FeNO・呼吸機能検査による定期的な評価まで対応しています。横浜駅西口から徒歩圏内です。
横浜フロントクリニックでは、呼吸器専門医による間質性肺炎の評価・診断に対応しています。当日CT・呼吸機能検査・血液検査を組み合わせた精密評価が可能です。横浜駅西口から徒歩圏内です。

執筆者情報
井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医
2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。
フロントクリニックグループ一覧
- 三浦メディカルクリニック
- 横浜フロントクリニック
- 東京品川フロントクリニック
- 自由が丘フロントクリニック(2026年10月開院予定)
- 新宿区分院(2027年12月開院予定)
【保有資格・所属学会】
- 難病指定医(呼吸器)
- 緩和ケア研修会修了医
- 医学博士
- 日本内科学会認定内科医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
- 日本医師会認定産業医
- 厚生労働省認定 臨床研修指導医
- 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
参考資料
- 日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン2024』
- Global Initiative for Asthma (GINA) Report 2024
- 日本産科婦人科学会「妊娠と薬情報センター」