• 5月 8, 2026

スギ・ヒノキ花粉が終わったのに症状が続く理由|5月から始まるイネ科花粉と喘息への影響

ゴールデンウィークが明けても、くしゃみや鼻水が止まらない。咳が続いている。目がかゆい──そんな症状に心当たりはありませんか。

先日、黄砂と呼吸器への影響についてお伝えしました。「花粉が終わったと思ったら今度は黄砂」という話でした。

実はもう一つ、この時期から新たに始まる”見えにくい敵”があります。

ゴールデンウィークが明けたこの時期から飛び始めるのが、イネ科植物の花粉です。スギ・ヒノキが終わったからといって油断していると、「なぜかまだ症状が続いている」という状態に陥ります。

今日は、スギ花粉とは異なるイネ科花粉の特徴と、呼吸器専門医として特に気をつけてほしい喘息への影響について解説します。

花粉症というとスギ・ヒノキのイメージが強いですが、日本で花粉症の原因になる植物はそれだけではありません。イネ科植物(カモガヤ・オオアワガエリ・ハルガヤなど)は、5月ごろから飛び始め、6月に1回目のピークを迎えます。その後、稲刈りが始まる9月ごろに再び飛散します。

スギ花粉との主な違いは以下の3点です。

スギ花粉イネ科花粉(カモガヤ等)
飛散時期2月〜4月5月〜9月
飛散源山地のスギ林身近な河川敷・空き地・公園
飛散距離数十km以上数十m程度
粒子径約30μmより小さい

イネ科花粉は、スギやヒノキのように山から飛んでくるのではなく、近くの田んぼや雑草の多い河川敷や空き地などから飛散します。横浜でいえば、多摩川・鶴見川沿いの河川敷、港周辺の草地などが飛散源になりえます。近所を歩くだけで花粉を吸い込んでいる可能性があります。

ここが呼吸器専門医として最も伝えたいことです。

カモガヤは他のイネ科の植物と比べて花粉の大きさが小さいという特徴があります。そのため、鼻や喉だけでなく、より奥の気道まで到達しやすく、喘息などの症状を引き起こす可能性も懸念されています。また、カモガヤ花粉のアレルゲン性は高く、少量の花粉で強いアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

スギ花粉は粒子が大きいため、鼻や喉でほとんどが捕捉されます。一方でカモガヤのような小粒子の花粉は気管支まで到達しやすく、気道の炎症を直接引き起こします。すでに喘息を抱えている方では、この時期に発作が増加するケースが外来でも増えてきます。

「スギ花粉のときはそれほど症状がなかったのに、5月以降に咳がひどくなる」という方は、イネ科花粉への感作(アレルギー反応)が関与している可能性があります。

スギ・ヒノキの花粉飛散が終息してもまだ症状が治まらない、5月に入っても鼻がムズムズ・鼻水・鼻づまり・くしゃみ・喉がいがらっぽいなどの症状が出る方はイネ科花粉症の可能性が高いでしょう。

呼吸器症状に絞ると以下が典型的です。

  • スギ・ヒノキの季節が終わっても咳が続く
  • 5月以降に喘息の発作が増えた
  • 河川敷や公園の草地を歩いた後に咳が出る
  • 毎年5月〜7月になると咳や息苦しさが悪化する

また見落とされやすいのが、イネ科のアレルギー症状は粘膜に強く出るとも言われており、アレルギー性鼻炎から咳や喉の違和感を伴うといった呼吸器の症状が酷くなる場合もあります。「鼻炎だけ治療していたが、実は下気道にも炎症が及んでいた」というケースも外来では珍しくありません。

さらに、イネ科花粉症を発症すると口腔アレルギーも併発する可能性があります。イネ科の植物がウリ科のスイカやメロン、マメ科のピーナッツなどと似ている抗原を持っているからです。これらの食材を食べた後に唇の腫れや口の中のイガイガ感がある方は、一度アレルギー検査を受けてみることをお勧めします。

スギ花粉症の方がイネ科花粉症も合併しているケースは珍しくありません。「春はスギ、初夏はイネ科」と季節を変えて二段階で症状が出るため、「花粉症が一年中続いている」と感じている方も実はこのパターンであることがあります。

アレルギー検査(血液検査)でカモガヤ・オオアワガエリなどのイネ科特異的IgEを確認することで、感作の有無を把握することができます。自分がどの花粉に反応しているかを把握することが、治療方針の選択と日常の対策に直結します。

横浜は海沿いの都市ですが、市内には多摩川・鶴見川・境川など複数の河川が流れており、その河川敷にはカモガヤをはじめとするイネ科植物が広く自生しています。都市部でありながら、イネ科花粉の飛散源が身近に多い環境です。

「みなとみらいや本牧の海沿いを散歩した後に咳が出る」「帷子川沿いを通勤路にしているが5月から症状が増える」という方は、イネ科花粉の影響を考える必要があります。

薬物療法

イネ科花粉症の治療も、スギ花粉症と同様に抗ヒスタミン薬・点鼻ステロイドが基本です。喘息が合併している場合は、吸入ステロイドによる気道炎症の管理が特に重要です。5月に入ってから慌てて受診するよりも、飛散開始前から治療を始めておくことで症状の重症化を防げます。

日常の対策

イネ科花粉の飛散距離はスギ花粉より短く、発生源の近くで濃度が高くなります。河川敷や草地の多い場所を避ける、外出後の着替えと洗顔を習慣にする、という対策が有効です。

  • スギ・ヒノキの花粉シーズンが終わっても咳や鼻炎が続いている
  • 毎年5月〜7月に喘息の症状が悪化する
  • 花粉症と喘息の両方を持っていて治療がうまくいっていない
  • 自分がどの花粉に反応しているか検査で確認したい

横浜フロントクリニックでは、アレルギー検査・呼吸機能検査・FeNO検査を受診当日に実施し、喘息とアレルギー性気道炎症を同時に評価できます。横浜駅西口直結で、WEB予約・LINE予約対応です。

井上 哲兵(いのうえ・てっぺい)
医療法人社団南州会 フロントクリニックグループ 理事長/医学博士
日本呼吸器学会 呼吸器専門医

2019年4月に医療法人社団南州会 理事長に就任。現在は3院の呼吸器医専門クリニックを要するフロントクリニックグループを運営。

フロントクリニックグループ一覧

【保有資格・所属学会】

  • 緩和ケア研修会修了医
  • 医学博士
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本医師会認定産業医
  • 厚生労働省認定 臨床研修指導医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(呼吸器)
  • 難病指定医(呼吸器)

参考文献

  • 日本アレルギー学会「アレルギー性鼻炎に関するガイドライン2020」
  • 日本呼吸器学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」協和企画
  • 環境省「花粉症環境保健マニュアル2022年度版」
  • tenki.jp 花粉飛散情報(2026年4月27日更新)
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