診療内容
重症喘息外来
重症喘息外来について
横浜フロントクリニックでは、呼吸器専門医・アレルギー専門医が「喘息のかかりつけ医」として、重症喘息治療を行なってまいります。喘息の症状がコントロールできずに日常生活に障害が出ている患者様はぜひ一度当院の重症喘息外来をご受診ください。
吸入療法はもちろんの事、生物学的製剤という特殊な治療薬も行う事ができます。
6歳以上の小児に対する生物学的製剤の使用も可能です。
喘息治療について経験豊富な呼吸器専門医・アレルギー専門医が診療致します。重症喘息患者様であっても随時診察をお受け致します。紹介状の有無は問いませんが、現在の治療内容がわかるお薬手帳や過去の検査結果等がありましたらご持参いただけると大変助かります(無くてももちろんOKです)。成人・小児重症喘息は呼吸器専門医・アレルギー専門医・放射線科診断専門医がチームとなって診療を行って参りますので外来担当医が途中で尾上(林)医師(院長・呼吸器専門医)、井上(哲)医師(法人理事長・呼吸器専門医)、渡邉医師(アレルギー専門医)、古屋医師(呼吸器専門医)になる事がございます。あらかじめご了承ください。
喘息症状に悩まない生活、子供に喘息を理由に活動制限をさせない生活を目指して治療をしていきましょう!
使用可能な生物学的治療薬
当院では、以下の生物学的治療薬の処方を行っております。
生物学的製剤 | 作用 |
---|---|
ゾレア® (抗IgE抗体) |
IgEの働きを抑える |
ヌーカラ® (抗IL-5抗体) |
好酸球の働きを抑える |
ファセンラ® (抗IL-5受容体抗体) |
好酸球の働きを抑える |
デュピクセント® (抗IL-4/13受容体抗体) |
より上流のアレルギー経路を幅広く抑える |
テゼスパイア® (抗TSLP抗体) |
より上流のアレルギー経路を幅広く抑える |
喘息治療の目標
重症喘息の治療には、吸入ステロイドや気管支拡張薬などの吸入薬が使用されます。これらの治療を調整しながら駆使したにもかかわらずコントロールが不良(症状が抑えこめない。発作の頻度が多い。)である場合を重症喘息といいます。
喘息症状をお持ちの患者様は、症状・発作が起こるのが当たり前と思っていらっしゃいませんか?
【健康な人と変わらない生活(例)】
- 朝までグッスリ眠れる
- 仕事や勉強に集中できる
- 何の不安もなく活動できる(スポーツ・旅行など)
- 家事がスムーズにできる
- など
喘息の治療は、日々、進化しています。これまでの治療ではコントロールすることが難しかった喘息でも、うまく症状をコントロールすることが可能になってきています。
喘息症状で様々な制限がある生活を『仕方がない』と受け入れないでください。あなたに合った治療を行い、症状(発作)をコントロールして、健康な人と変わらない生活を目指しましょう。
目指すべきは、『喘息であることを忘れて生活できる』です。
喘息治療について
喘息治療の進歩により、生物学的製剤が使えるようになりました。
前述しましたように喘息治療では、吸入ステロイド薬が基本となっています。
そして必要に応じ、気管支を広げる薬を併用することもあります。しかし、これらの薬を最大限使っても効果が不十分な重症喘息の患者様がいます。一昔前はそのような場合は『耐える』ことしかできなかったのです。時に全身性ステロイド(点滴や内服のステロイド治療)を受けるしか方法がなかったのです。しかし、現在では喘息治療の劇的な進歩・進化により、生物学的製剤とよばれる薬が使えるようになりました。吸入薬などの治療で十分な治療効果が得られなかった喘息に対して、はじめてまともに戦える治療薬が開発されたのです。これは喘息治療における、『革命』と言われています。
以下の図は、喘息の状態に合わせた治療例になります。
発作がある際に効果が不十分な場合は、薬を組み合わせ、治療強度を高めます。
生物学的製剤とは
生物学的製剤は喘息発作が起きるまでの体内の様々な過程を、ピンポイントに抑えることができる注射製剤になります。
現在、日本では当院でも取り扱っているゾレア®、ヌーカラ®、ファセンラ®、デュピクセント®、テゼスパイア®の5種類の生物学的製剤が承認されています。
それぞれ作用機序や適応が異なりますので、喘息の症状や細かな検査を行い、薬を決定していきます。例えば、好酸球性副鼻腔炎の合併、アトピー性皮膚炎の合併、ハウスダスト・ダニなどのアレルギー性鼻炎の合併、血中好酸球数の上昇などを診察やCT画像検査・採血検査・呼吸機能検査などを行い、しっかりと調べ上げ、より最適な治療薬を決定していきます。
どのような患者様が生物学的製剤を導入すべきか?
前述しましたように喘息治療では、吸入ステロイド薬が基本となっています。
生物学的製剤の導入の目安は、年2回以上の喘息発作がある場合、ステロイドの内服を毎日服用している場合などが該当します。
ステロイドの吸入療法は全身への副作用はほぼありませんが、内服や点滴などは様々な副作用が認められます。全身がボロボロになる前に生物学的製剤の治療が絶対的に必要になります。
喘息治療のステップ
喘息治療は、その強度によって4段階の治療ステップに分けられています。
それぞれの治療ステップでは吸入ステロイド薬を基本治療薬としてその他の薬を組み合わせていきます。ちなみに、成人喘息の場合、吸入ステロイドを使用しない喘息治療はあり得ないことです。
吸入ステロイドを毎日使用しないで発作時(症状が悪い時)だけ、短時間作用型気管支拡張剤(メプチンやサルタノール等)を使用することはガイドライン上、禁忌(行ってはいけない治療)とされています。
治療ステップが1~4に進むほど治療の強度が高くなります。
治療ステップの決定は、患者様の現在の喘息の状態と、これまでの治療の内容を考慮して行われます。
治療ステップ | 長期管理薬 | ||
---|---|---|---|
基本治療 | 追加治療 | 発作治療※ | |
治療ステップ1 ICS(低用量) |
左記使用できない場合、以下のいずれかを用いる
|
LTRA以外の抗アレルギー薬 | 吸入SABA |
治療ステップ2 ICS(低〜中用量) |
左記が不十分な場合に以下のいずれか1剤を併用
|
||
治療ステップ3 ICS(中〜高用量) |
左記に加え下記のいずれか1剤、あるいは複数を併用
|
||
治療ステップ4 ICS(高用量) |
左記に加え下記の複数を併用
|
※発作治療は、軽度の発作までの対応を示しています。
- ICS:吸入ステロイド薬 LABA:長時間作用性β2刺激薬
- LAMA:長時間作用性抗コリン薬 LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬 SABA:短時間作用性β2刺激薬
日本アレルギー学会:アレルギー総合ガイドライン 2019, 協和企画,2019, p.72
目指すべき喘息コントロール状況について
目指すべきコントロール状況は喘息実践ガイドラインによれば『臨床的寛解』とされます。下記の指標に満たない場合は喘息コントロールが悪いと判断され治療の強化をしていくことになります。なお、喘息の『臨床的寛解』は、この基準を満たせば『治癒』したという事ではありません。あくまでコントロールの目標であって、ゴールではありません。この『臨床的寛解』、すなわち『日常生活で喘息による制限を一切受けない状況』を薬を使いながら維持していくことが大切です。喘息は決して治癒する病気ではありません。持病としてうまく付き合っていかなければいけない疾患なのです。
喘息コントロールテスト(ACT:アクト)という質問評価方法です。各質問について該当する項目を選んでください。できる限り率直にお答えください。
この4週間に、喘息のせいで職場や家庭で思うように仕事がはかどらなかったことは時間的にどの程度ありましたか?
この4週間に、どのくらい息切れがしましたか?
この4週間に、喘息の症状(ゼイゼイする、咳、息切れ、胸が苦しい・痛い)のせいで夜中に目が覚めたり、いつもより朝早く目が覚めてしまうことがどのくらいありましたか?
この4週間に、発作止めの吸入薬(サルブタモールなど)をどのくらい使いましたか?
この4週間に、自分自身の喘息をどの程度コントロールできたと思いますか?
各項目の点数を足してあなたの総合点を出してください。
下記表を見て、ACTの総合点とあなたの喘息状態を当てはめてください。
これら全ての項目を達成する必要があり、それを維持していく必要があります。これに満たない場合は、是非当院に一度ご相談ください。喘息に左右されない自由な生活を一緒に目指しましょう!
項目 | 基準 |
---|---|
1 ACT | 23点以上(1年間) |
2 増悪* | なし(1年間) |
3 定期薬としての経口ステロイド薬 | なし(1年間) |
増悪とは喘息症状によって次のいずれかに該当した場合とする。
① 経口ステロイド薬あるいは全身性ステロイド薬を投与した場合
② 救急受診した場合
③ 入院した場合
一般社団法人日本喘息学会 喘息診療実践ガイドライン 2023 協和企画, p23, 2023